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究極の節税術 合法的な魔法の給与とは

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究極の節税術 合法的な魔法の給与とは

究極の節税術




1.合法的な魔法の給与とは

 「税金とは何か」という命題に対しては、社会への貢献、行政サービスに対する対価、などの色々な考え方がありますが、ビジネスとして考えた場合、税金とはやはり「コスト(費用)」と考えるのが自然でしょう。また、税金にも色々な種類がありますが、まずは法人が納付する主たる税金である法人税等について考えることとします。

 企業として存続するためには利益を獲得しなければなりませんが、利益は「利益=売上-費用」で算出されるため、税金を費用とすれば、これを削減できると、利益はそれだけ増加することになります。では、どうすれば税金を削減できるのでしょうか。

 皆さんは顧問契約を締結した税理士に何を期待していますか。税務申告書の作成、経営分析、資金繰りの相談など事業主の考え方により様々ですが、税理士に期待する大きなものの一つにこの「税金削減」があるのではないでしょうか。

 税金削減には2つの方法がありますが、一つは「節税」、そしてもう一つは「脱税」です。一般の方にはこの二つの違いがよく分からないかもしれませんが、「似て非なるもの」とはこのことです。納付する税金を減らす、という目的こそ同じですが、そこに至るまでの過程、つまり「節税は合法で脱税は違法」という決定的な違いがあるからです。

 しかし、どこまでが合法の節税で、どこからが違法の脱税になるのか、一般の方にとってこの重要なボーダーラインがどこにあるのかを見極めるのはかなり厳しいものがあります。

 念の為にご案内すると、節税するためには「利益」があることが大前提です。何故なら、法人税等は利益に税率をかけて算出するので、利益がなければ法人税等も発生しないからです。よって、最初から大赤字であれば、節税の余地などそもそもありません。利益がそこそこあり、そのままだと相応の法人税等を納めなければならない状況であるからこそ、節税を考えることができる権利?があるのです。つまり、節税とは、利益計上を前提とした「贅沢な悩み」ということになるでしょうか。

 また、節税とはいっても、やみくもに法人税等を減らせばよいわけではありません。節税には、

・節税のために現金を支出しなければならないのか否か
・節税の結果、法人税等そのものが減少するのか、それとも、単に法人税等の支払時期を将来へ繰り延べているだけなのか

という2つのポイントがあります。そして、これらを組み合わせると、

・現金を支出しないのに、法人税等そのものが減少する
・現金は支出するが、法人税等そのものは減少する
・現金は支出しないが、法人税等の将来への繰り延べでしかない
・現金は支出するし、法人税等の将来への繰り延べである

という4パターンになります。現金は支出するよりもしない方がベターで、法人税等は支払いを将来に繰り延べるよりも税金そのものが減少する方がベターなので、費用対効果からは「現金を支出しないのに、税金そのものが減少する」が最も優先順位が高くなり、以下、上記の順で優先順位が高くなります。ただし、状況によっては、2番目と3番目が入れ替わることがあるかもしれません。

 また、日本には星の数ほど会社がありますが、これらを大きく区別すると、

・上場会社などの大企業
・家族経営の零細企業
・上記2つの中間

の3つになります。一概に節税といっても、会社の規模などにより有効に機能するものがそれぞれ異なるので、ある節税方法が上場会社などの大企業にとっては有益であったとしても、家族経営の零細企業にとってはそうではない場合があり、その逆も然りです。

 私どもは、

・自宅を本社として法人登記
・社員は夫婦を中心とした親族のみで、その他はパートやアルバイト
・売上げは年間5000万円以下
・利益率が高い業務形態

といった「小規模ながらも高い利益率のため、税金対策が必要となる、家族経営の零細企業」を中心に業務展開をし、そのノウハウも蓄積しているので、上記の要件に該当する場合は、お役に立てるのでは、と考えますが、逆に、上記の要件のどれにも該当しない場合、私どもよりも他の事務所に依頼された方がよいかもしれません。

 ちなみに「利益率が高い業務形態」とは、

・店舗不要
・雇用なし(家族雇用を除く)
・設備不要
・在庫なし

のため、主たる費用は家族雇用の人件費のみとなり、結果として実質的な利益率が高くなる、ということです。具体的にはサービス業、とりわけその中でも、自分の知識や経験を提供して対価を得る単純に価格比較ができないオリジナリティの強い仕事、ということになるでしょうか。

 それでは、「現金を支出しないのに、税金そのものが減少する」という節税対策として最も重要性が高いもののうち、家族経営の零細企業だからこそ最大限の効果が得られるものを中心にこれからご案内していくこととします。

 さて、家族経営の零細企業では、事業年度の見通しについて、たとえば、

・売上 2000万円
・費用 1200万円
・利益  800万円

という予想を立てた場合、ご主人様や奥様といった親族の年間人件費総額を利益相当額の800万円程度に設定します。すると、費用1200万円に人件費800万円が加算されるので費用の総額は2000万円となって法人の利益はなくなり、法人の利益に対して課税される法人税等は発生しません。

 そして、ご主人様や奥様などの親族に支払われる給与について税金等が課されることになります。給与が多くなればそれだけ課される税金等も多くなるので、必要以上に給与を多くすることは得策ではありません。つまり、上記の例では、法人の利益である800万円以上に年間人件費を設定すると、無意味に税金等の負担が増えるだけ、ということです。

 一方、人件費が少なくなればそれだけ課される税金等も少なくなります。しかし、人件費を少なくすると、その分が法人に利益として残ってしまい、これに対して法人税等が課税されるので、全体をよく考えずに人件費を少なくすることもお勧めしません。

 つまり、可能な限り精緻に年間利益予想をし、この予想に基づいて「多からず少なからず」のバランスのとれた適正な人件費を設定する、というのが、家族経営の零細企業における税金対策の「最初の一歩」ということになります。予想利益に応じてご主人様や奥様などの親族の年間人件費総額を決定する、ということが、他の社員の手前もあり、一般の会社ではその実施がなかなか難しいので、家族経営の零細企業ならではの税金対策、といえるでしょう。

 さて、適正な人件費の設定を終えたら、家族経営の零細企業ならではの税金対策は、いよいよ次のステージへと突入です。これまでは法人に対して課税される法人税等についての税金対策でしたが、次は、個人に対して課される所得税等の税金や社会保険料についての対策になります。

 ご主人様や奥様などの親族の年間人件費総額について「必要以上に多く設定すれば税金や社会保険料の負担が重くなるし、少なく設定すると、その分が法人に利益として残ってしまい、これに対して法人税等が課税される」と前述しました。そうなると、人件費そのものは予想利益に応じて自動的に決定されるため、「調整の余地がない」ということになります。それでは、税金等の対策はどうすればよいのでしょうか。

 給与所得者の所得税等の税金は、給与所得から配偶者控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引いた差額に対して課税され、ここからさらに住宅ローン控除や配当控除などの税額控除を控除して納付額が決まります。よって、所得税等の税金を減らすには、この所得控除等を漏れなく計上するしかありません。これには、

・実家の所得の少ない老親を扶養親族にする
・保険控除を最大にする
・医療費控除や雑損控除を漏れなく計上する

などがあります。このような所得控除等を漏れなく計上する努力は必要ですが、所得控除等を漏れなく計上するといっても、おのずと限界があるのも現実です。さらに、社会保険料にいたっては、原則として保険料負担が給与の金額に比例するので、社会保険料の負担を減らすには、給与の金額を減らすしか方法がありません。

 しかし、もし「税金や社会保険料が課されない擬似給与」というものがあったら如何でしょうか。この擬似給与は「法人の費用になる一方、擬似給与を受け取った社員の側では税金や社会保険料が課されない」という、にわかには信じ難い「合法的な魔法の給与」とでも命名できるようなものがあるのです。実は、これこそが家族経営の零細企業ならではの究極の対策であるといえるでしょう。

 一般的なサラリーマンは、給与から税金や社会保険料が控除され、残った手取りで生活しています。たとえば、月給50万円で税金等が10万円だと、手取り40万円で生活している、ということです。そこで、この給与50万円のうち20万円を「合法的な魔法の給与」に変更し、税金等が課される従来の給与は30万円に減額するのです。

 すると、法人の費用は30万円+20万円=50万円で変更の前後で変化がありませんが、この20万円に対しては税金等の負担がないため、その分、給与が同じでも、手取りは増加することになります。仮に、税金等が10万円から6万円に減少すると、手取りが4万円増加することになり、その金額は年間で48万円になります。

 よって、この「合法的な魔法の給与」を最大限に活用することが、家族経営の零細企業にとっては、節税の究極のポイントになります。では、「合法的な魔法の給与」とは、具体的にはどのようなものなのか、これからご案内することにしましょう。

2.住居費

まずはトップバッターとしてご紹介するのは、住居に伴う費用です。「合法的な魔法の給与」であっても、

・特殊な人にしか該当しないもの
・金額が少額なもの
・単発的で継続しないもの

といったものは、あまり大きな効果が期待できません。

 しかし、住居関係の費用は、

・住居は誰にでもある
・一般的な家計では、その金額は生活関係の費用のなかでは最大
・断続的ではなく、これからも継続して発生する費用

といった性格のものなので、「合法的な魔法の給与」の中でも、その効果は群を抜いています。

 賃貸住宅の場合は、社員が大家から直接借りるのではなく、一旦、会社が大家から借り上げ、その物件を社員に転貸することがポイントになります。仮に家賃が10万円だとすると、

・会社が大家と賃貸契約を直接締結
・会社が大家に家賃10万円を直接支払い
・会社が賃借した住居を社員に転貸
・社員は会社に家賃の20%相当額(2万円)を支払い
・実質的に会社が負担している家賃8万円(10-2=8万円)を給料50万円から差し引き42万円に減額

といった流れになります。このようにすると、家賃分を控除した後の給与は、

・変更前 50-10=40万円
・変更後 42- 2=40万円

となり、どちらも同じ40万円です。しかし、前者は50万円の給与に対して所得税等が課税されるのに対し、後者は42万円の給与に対してしか課税されないので、課税される給与の金額が少ない後者の方が手取り額は多くなります。

このように、社員が会社に支払う家賃が少なくなればなるほど、つまり、会社が実質的に負担してくれる家賃が多くなればなるど、課税される給与の金額が少なくなるので、上記の例では2万円としている家賃の社員負担分を極端に少なくして「1000円ポッキリ」にでもしたいところですが、これは税法上の問題が発生します。

 それは、会社が社員から収受しなければならない最低限の家賃は、次の算式により計算された賃貸料相当額の50%以上であれば、給与として課税されませんが、これを下回るとその不足分が給与とみなされ、所得税等が課税されるからです。なお、現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃分の支給は、社宅の貸与とは認められず、給与として課税されるので注意が必要です。

 次の3つの合計額を月額家賃としての賃貸料相当額とする

・建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
・敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
・12円×総床面積の坪数

 しかし、実際にこの算式を計算するには、貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認する必要があるなるなど非常に煩雑なので、「市場価格の約20%」がおよそこの算式により計算した金額に相当することから、 実務上はこれにて代用しているケースが多いようです。

ただし、この取り扱いは、次の要件を満たす「小規模住宅」に限られます。、

・建物の耐用年数が30年以下(木造)  床面積が132u以下
・建物の耐用年数が30年を超(木造以外)床面積が99u以下

この判定に当たっては、区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えます。
 
 では、これ以上の広さの場合はどうなるのでしょうか。小規模住宅より広いものは「一般住宅」として位置づけられ、その要件は、

・木造   132u超240u以下
・木造以外 99u超240u以下

になります。この一般住宅において会社が収受しなければならない最低限の家賃は、次の算式により計算された金額になります。

 次の2つの合計額を月額家賃としての賃貸料相当額とする

・建物の固定資産税の課税標準額×12%(木造以外は10%)÷12
・敷地の固定資産税の課税標準額×6%÷12

 しかし、小規模住宅の場合と同様に、実際にこの算式により計算して算出するには、貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認する必要があるなるなど非常に煩雑なので、「市場価格の約50%」がおよそこの算式により計算した金額に相当することから、 実務上はこれにて代用しているケースが多いようです。

さて、それでは一般住宅よりもさらに広い場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。残念ながらこれは「豪華住宅」とされ、これまでご案内してきたスキームを活用することが出来ません。豪華社宅であるかどうかの判定は、床面積が240u超のもので、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等の各種要素を総合的に勘案して判定します。

 さて、このスキームは現在の住居が借家であることが前提になっていますが、では、持ち家の方はどうすればよいのでしょうか。機転の効く人であれば、

・持ち家を会社に賃貸
・会社はこれを社員に転貸

というスキームを思いつくかもしれません。

 しかし、残念ながら、「持ち家を会社に賃貸して、さらにこれを自分が賃借する」というスキームは認められていません。「同じものを借りるために貸す」ということは、単に名目上の取引があったとしても、実態としては何も変化せず、内容を伴っていないからです。

 では、既に自宅を購入してしまった人には何も恩恵はないのでしょうか。心配しなくでも大丈夫なのでご安心下さい。マイホームならではの節税方法をご案内致しましょう。

 自宅を本社として法人登記した場合は、会社はあなたから事務所スペースを賃借していることになります。すると、会社はあなたに事務所スペース分の家賃を支払わなければなりません。

 この家賃は、会社としては法人税の計算上の費用として、あなた個人としては所得税の計算上の不動産所得の売上として、それぞれ取り扱われます。そして、受け取る家賃をいくらにするかですが、それには、まず賃貸するための費用を計算する必要があります。家屋全体の費用、つまり、

・減価償却費
・住宅ローンの支払利息
・税金
・住宅保険料

といった費用の合計額を計算し、仮にこの金額が300万円だったとします。事務所スペースとして賃貸している面積が全体の1/3だとすると、これら費用の合計額の1/3である100万円が会社に事務所として賃貸するための費用になります。そして、この費用と同額の100万円を家賃として会社から収受すると、個人としての不動産所得は「売上(100万円)-費用(100万円)=0円」となることから、不動産所得に対する税金は発生しません。

 しかし、この家賃は会社としては費用となることから、仮に、事業年度の見通しについて、たとえば、

・売上 2000万円
・費用 1200万円
・利益  800万円

という予想を立てた場合、そのままであれば、年間給与は800万円になりますが、会社としては家賃を年間100万円支払うことから、費用の合計額は1200+100=1300万円となり、これに伴って給与も800万円から700万円に引き下げることが可能になります。その100万円分、個人に課される税金等は軽減され、前述した賃貸住宅の場合と同じ効果が得られるわけです。

 さて、これからマイホームを購入しよう考えている方は、これまでのご案内を読んで「いっそのこと、会社が住宅を購入し、これを社宅として借りるのがよいのでは」とお考えかもしれません。これだと、住宅に関する費用については、建物部分の減価償却費など全てが会社の費用になり、かつ、会社が収受する家賃を相場の20%程度に設定(小規模住宅の場合)することによる「合法的な魔法の給与」のスキームも実行可能です。

 このように一見良いこと尽くめのようですが、その前に、根本的な問題を考えなければなりません。それは「マイホーム購入が、そもそも経済的にお得なのか」ということです。マイホーム購入に経済的損得以外の価値を見出しているのであれば、それは人それぞれの価値観の問題です。しかし、マイホーム購入に対して経済的損得に重きを置いて考えるのであれば「節税は300万円見込めるけれど、マイホーム購入で1000万円も損してしまった」では話になりません。

マイホーム購入の経済的損得とは、ズバリ「購入した土地価格が上がるのか」ということです。詳細については「不動産投資で破産するな!」をご参照頂きたいのですが、日本では建物の評価額は最終的になくなり0円となるので、価値が残るのは土地のみになります。節税の効果以上に土地価格が下落すれば、全く意味がありません。

 また、マイホームを個人で購入すれば売却益は3000万円まで非課税になる特典がありますが、法人で購入した場合は、このような税制上の特典はありません。これらの点を踏まえて、

・そもそもマイホームを購入するのか
・購入するとすれば、個人と法人のどちらで購入するのか

について十分に検討することをお勧めします。

3.食費

 食費といえば直ぐに連想するのは「交際費」でしょうか。友人と食事をして「ここは交際費で落とすから、俺が払うよ」という、あのお馴染みのセリフです。会社社長の特権ですね。

 交際費として会社の費用にするには、以下の要件を満たす必要があります。もちろん、情報収集も含め、なんらかの理由で業務上関係する人に対する接待が大前提です。

・資本金が1億円以下の法人
・交際費の上限額は年間600万円

 家族経営の零細企業であれば、この2つの要件を満たすのは全く問題ないはずです。資本金が1億円超ということはないでしょうし、年間600万円という上限額は家族経営の零細企業にとっては多過ぎるくらいです。ただし、これらの要件を満たしても、交際費のうち10%については税法上の費用とはならないので注意が必要です。たとえば、年間の交際費が30万円だとすると、そのうち費用となるのは27万円で、3万円は費用になりません。

 交際費だと時間や場所の制約は緩いのですが、10%課税が気になります。そもそも「お酒はお付き合い程度でそれほど飲まない」という方であれば、交際費ではなく、会議費を検討してみましょう。

 会議費は交際費のように資本金や年間上限額についての規程はないのですが、会議のための費用なので、時間帯や場所については、その性格上、自ずと交際費より制約がかかります。「深夜に居酒屋で業務上の打ち合わせをした」というのは、常識的に考えると厳しいものがあります。普通はお昼の時間帯を中心に、アルコールがメインではないレストラン等で、というのが自然です。金額も一人当たり3000円程度が目安になるでしょうか。単なる飲み食いでないことを主張するためには議事録も作成しておくことをお勧めします。回数も具体的な制約があるわけではありませんが、社員数が少ない家族経営の零細企業だと、週に何度も開催するのはやりすぎになるでしょう。何事もバランスが大切です。

 しかし、社外の人を交えての会議だと、次の要件を満たせば、政策的理由により一転してその制約が緩くなり、場所や時間帯の縛りはなくなります。深夜の居酒屋でも大丈夫、ということです。

・会議のメンバーに必ず一人以上の社外者がいること
・一人当たりの平均額が5000円以下であること
・相手先などを記載した書類作成

 なお、一人当たりの平均額が5000円を超える場合は、その超える部分だけが交際費とされるのではなく、全額が交際費となるので、注意が必要です。

 その他、忘年会・新年会などの費用も福利厚生費として会社の費用として計上できます。忘年会・新年会を福利厚生費として会社の費用とするためには、

・社員全員が対象
・1次会のみ
・数千円/人

の要件を満たす必要があります。

 「社員全員が対象」については、家族経営の零細企業であれば、特に問題になることはないでしょう。この要件は「役員など一部の特定社員のみを対象としたものは不可」ということなので、社員がご夫婦2人だけなら、そもそも問題になりようがありません。

 「1次会のみ」については、「2次会でも要件を満たせば可能」との考えも一部にありますが、あまり欲張らずに1次会のみにしておいた方が無難です。はしごをすれば、それだけお金もかかることですし。

 そして、最後の「数千円/人」については「あまり豪勢なものは不可」ということです。特に明確な金額の基準があるわけではありませんが、一人当たり数万円(数十万円?)にもなれば、福利厚生費の域を超えてしまい、みなし給与としてほぼ確実に課税されることになるでしょう。
 
さて、ここまでは、食費の中でもプラスアルファ的なものについてご案内してきましたが、たとえ税法上の制約を満たして合法的に費用として計上できるとしても、これらがなければ事業が立ち行かなくなったり、また、生活が出来なくなるわけではありません。単なる「会社の金で飲み食いできる」という発想は雇われサラリーマンのものであって、交際費や会議費は食べ放題ならぬ「使い放題」な訳ではありません。散財すればその分だけ確実にお金がなくなるだけです。やはり前述の住居費でご案内したように、会社が生活費を支援してくれるものでなければ、「合法的な魔法の給与」の価値も半減してしまいます。

 このような考えからすると、昼食や夜食などを会社が支援してくれれば、これは実生活で必要なものなので「合法的な魔法の給与」としての価値も上昇しますが、一定の要件を満たせば、昼食や夜食についても福利厚生費として会社の費用に計上することができます。

 まずは昼食についてですが、

・会社からの補助は月額3500円以内
・社員が半分以上を負担

という要件を満たせば、福利厚生費として「合法的な魔法の給与」になります。次に、夜食については、昼食のような補助金額の上限や負担割合についての制約は特にありませんが、

・残業に伴い提供されるもの
・会社を通じて仕出しや出前を取る(コンビニ弁当でもOK)

というのが、福利厚生費とするための要件となります。

4.その他の生活費

 会社が生活費を支援する「合法的な魔法の給与」について、住居費と食費についてご案内しましたが、その他のものも目白押しです。

・自動車

 費用対効果の観点から考えると、まず最初にご案内したいのが、自動車関連の費用になります。

 会社名義で自動車を購入すれば、自動車関連の費用は全額が会社の費用になります。しかし、常時にわたって社員の自宅に駐車しているなど、会社で使用している実態が伴わないと判断される場合は、この考えは適用されません。自動車を会社から現物支給されていると判断されてしまうと、これは給与とみなされ、とんでもない税金を払わされる羽目に陥りかねません。

 では、家族経営の零細企業が自宅を本社として法人登記している場合はどうなるのでしょうか。会社と自宅が一体なので、会社に駐車しているといえばそうだし、自宅に駐車しているといえばそうなります。このような明確に区別できない部分はどうしても発生してしまいますが、それでは、どうすればよいのでしょうか。

 これについては、個人で購入した自動車を会社に貸し出す、という考えをとることで解決します。個人は会社に自動車を貸し出し、会社から賃貸料を収受し、ここから費用を差し引いて、雑所得として確定申告することになります。

 会社に自動車を貸し出すにあたっては、

・車両の減価償却費
・自動車関係の税金
・自動車保険料
・カーローンの支払利息

といったものについて金額を算出します。これら費用の合計額に、会社業務としてどれだけ使用したかという使用割合を乗じて算出した金額が、自動車を会社に貸し出すための費用になります。使用割合については、会社使用と個人使用のそれぞれの走行距離を使用の都度記録し、これを基にした割合が一番正確ですが、平日は会社、休日は個人、という前提で5/7という割合で代用しても、それが実態と極端にかけ離れていなければ、問題ないでしょう。

 会社から収受する賃貸料を上記で計算した自動車を会社に貸し出すための費用と同額にすれば利益は発生せず、個人に課税される所得税等の負担が増えることもありません。しかし、これらの費用は会社に貸し出さなかったとしても発生する費用なので、会社から収受する賃貸料が「合法的な魔法の給与」ということになります。

 なお、自動車に伴う費用としては、駐車代、高速代、ガソリン代などがありますが、駐車代と高速代については、区別することが可能なので使用割合を乗じることなく、会社での使用と個人での使用に分けて個別精算、ガソリン代については、使用割合を乗じて精算することになります。

・水道光熱費

 自宅を本社として法人登記した場合、電気ガス水道といった水道光熱費については、会社として使用した分と個人として使用した分とが混在することになります。よって、電力会社などに対しての支払いは一括して個人が支払い、このうち会社使用分を法人と精算することになります。

 会社使用分は料金に使用割合を乗じて算出しますが、実際の使用割合を算出することは不可能なので、会社として使用している床面積に応じた割合などを代用して計算することになります。

・携帯電話

 携帯電話については、会社契約にして社員へ貸与するという方法もありますが、これだと会社用と個人用との2つの携帯電話を持ち歩くことになるので、この不便さを回避するには、個人契約のものを使用して、会社が社員へ賃借料を支払う、という方法があります。

 これも会社使用と個人使用とが混在するので、使用割合に応じて按分する必要があります。毎月の通話記録の実績から会社使用と個人使用から使用割合を算出するしかありませんが、これを毎月実施するのも大変なので、2-3ヶ月サンプルをとり、以後はこの割合を代用するという簡便な方法を使用しても、これが実態と大きくかけ離れていなければ問題ありません。

・家電製品など

 テレビ・ビデオ・オーディオといった家電製品なども、会社の費用として計上することが可能です。このようにご案内すると、何でもかんでも全て会社の費用に計上してしまう人が散見されますが、もちろん一定の要件を満たす必要があります。それは、一言で表現すると「仕事で使用する」ということです。

 事務所や仕事部屋に設置されていて、既に生活用のものは所有しているが、情報収集や業務上のものを録画する等の必要性から購入した場合、といったところが要件になるでしょう。応接セットなどの家具も仕事中や来客時に使用している実態が伴えば、会社の費用として計上することが可能です。

・その他

 「仕事で使用する」という実態が伴えば、上記にご案内した以外のものでも、会社の費用として計上することが可能です。具体的には、書籍・雑誌、技能習得(車の運転免許、英会話学校、経理学校など)といったものがあげられます。

5.福利厚生費

 大企業の福利厚生といえばその昔は随分と充実していましたが、昨今の厳しい世情を如実に反映し、リストラ候補として真っ先にあげられて、いまや見る影もありません。

 「合法的な魔法の給与」の考え方からすると、本来の給与を削減してでもこのような福利厚生こそ優先して残すべきものです。「同じ金額を支出するのであれば、より付加価値の高いものにして社員の生活向上に寄与する」という合理的な考え方は、外資系企業では当たり前ですが、日系の名門企業といわれる会社では「形」と「理屈」が大切なので、なかなか受け入れ難たいもののようです。

 しかし、家族経営の零細企業では、会社のグランドデザインはあなたの思うがままなので、就業規則に詳細を定めて「合法的な魔法の給与」の考え方を積極的に取り入れていきましょう。

・社員旅行

 福利厚生の筆頭にあげられるのはやはり「社員旅行」になるでしょう。全額自腹で嫌な上司や先輩の顔色を伺わなければならない社員旅行などは誰も参加したくありませんが、家族経営の零細企業では気心の知れた人達だけなので、そのような心配もないでしょう。ただし、次の要件を満たさなければ、社員旅行を会社の費用として計上することが出来ません。

・日程は4泊5日以下(海外旅行は、現地滞在が4泊5日以内)
・会社負担が高額でない(一人あたり10万円以下が目安)
・社員全体が享受可能(参加率50%以上)
・社員の家族分の費用は対象外(帯同は可能)

 注意点としては、不参加者に現金支給すると、その人だけでなく、全員分が給与として課税対象になります。ただし、保安要員などの会社業務が理由で不参加になった人にだけ現金支給する場合は、現金支給を受けた人のみが給与扱いになり、他の参加者は福利厚生費として計上できます。

 あと、明文規定はありませんが、年に何回も実施するのは控えた方がよいでしょう。常識的には年に1回か多くても2回が限度ではないかと考えます。

 また、次のようなものについては、ここにいう福利厚生としての社員旅行には該当しないため、その旅行に係る費用は、給与や交際費などとして適切に処理する必要があります。

・役員だけで行う旅行
・取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
・実質的に私的旅行と認められる旅行
・金銭との選択が可能な旅行

・旅行補助

 旅行に対する福利厚生としては、プライベートな旅行に会社が補助金を支給するという方法もあります。これには、次の要件を満たす必要があります。

・会社がホテルなどに直接申し込み全額を支払
・社員は補助金控除後の残額を会社へ支払
・旅行補助についての規定作成

 具体的な補助金の金額について、明文規定があるわけではありませんが、平均的には3000円から4000円程度のようです。年間の支給回数にもよりますが、多くても10000円から15000円が限度でしょう。

 支給回数の上限については、毎月1回とか年間10回までなどが考えられますが、無制限とする例もあるようです。このあたりは、補助金の金額との兼ね合いも考えて判断する必要があるでしょう。家族も対象とするのであれば、その旨を明文化しておくべきです。

・レジャー施設利用など

 福利厚生といえば、旅行だけではありません。レジャー施設・観劇・スポーツ観戦・ジムといったものに会社から補助金を支給することも可能です。旅行補助と同様に、これには一定の要件を満たす必要があります。
 
・会社が施設に直接支払(法人会員など)
・法人会員の制度がない場合のみ個人会員でも可
・社員全員が利用可能であること
・就業規則に年間使用回数などを明記

・生命保険

生命保険は、個人が契約者として加入しても数万円程度の所得控除があるだけですが、会社が契約者として加入すると、次の要件を満たせばその保険料の全額又は一部が会社の費用として計上できます。そして、受取保険金を死亡退職金や弔慰金として社員遺族に支給すれば「合法的な魔法の給与」になります。

・保険金の受取人を法人にして保険料を会社が契約者として支払
・社員全員を対象

・医療保険

医療保険も、個人が契約者として加入しても数万円程度の所得控除があるだけですが、会社が契約者として加入すると、その保険料の全額又は一部が会社の費用として計上できます。そして、受取保険金を見舞金として社員に支給すれば「合法的な魔法の給与」になります。

・保険金の受取人を法人にして保険料を会社が契約者として支払
・社員全員を対象

・慶弔見舞金

 生命保険や医療保険の保険料を会社の費用として計上できるのは、保険金の受取人が会社であるからこそ認められるのであって、受取人が社員であれば、その保険料は社員への給与として取り扱われ、所得税等が課税されます。しかし、保険金を会社が受け取ったままであれば「合法的な魔法の給与」ではありません。これを「合法的な魔法の給与」として社員に還元するには「保険金と同額を慶弔見舞金として社員に支給する」という手順を踏む必要があります。

 慶弔見舞金については、その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税しなくて差し支えないとされているので、従業員、元従業員またはその親族などのお祝いや不幸に際して、一定の基準に従って支給される金品に要するものは、福利厚生費として会社の費用として計上できます。ちなみに、社会通念上相当な範囲を越える金額を支給した場合には、超えた金額だけでなく、その全額が給与所得として課税されます。ただし、相当な範囲を慶弔見舞金、これを超える金額を賞与として区分経理した場合にはその処理が認められると考えますが、何らかの必要性がなければあえて超えて支給することもないでしょう。なお、支出の相手先が社外の人(取引先など)であれば、これは交際費に該当します。

 このようにすれば、会社おいては、受取保険金と同額の慶弔見舞金を福利厚生費として社員等に支給するので利益が発生せず、一方、社員等においては、所得税等が非課税である慶弔見舞金として受け取ることにより税金等の負担が発生することはないので、会社が保険会社から受け取った保険金を原資とした「合法的な魔法の給与」が完成することになります。

 そのためには、慶弔見舞金の規程を事前に準備しておく必要があります。

 弔慰金は、一般的な香典の水準(数万円)から生活保障に値する水準(数百万円)に及ぶものまで幅広く、これを長期給付(遺族遺児育英年金など)によって実施することもありますが、生命保険を原資として弔慰金を支給する場合、相続税における弔慰金等としての非課税枠が参考になります。

・業務上の死亡 死亡当時の普通給与の3年分
・業務外の死亡 死亡当時の普通給与の半年分

 この水準を慶弔見舞金として定めておけば、福利厚生費として取り扱われ、弔慰金の支払いを受けた社員遺族が課税されることはありません。なお、弔慰金は葬儀前又は葬儀当日までに遺族に渡すことが望ましく、時機を逸すると退職金等として課税の対象になることがあるので、注意が必要です。

 見舞金を医療保険を原資として支給する場合、入院日数や手術の程度に応じて給付水準を定めておけば、福利厚生費として取り扱われ、これを受け取った社員が課税されることはありません。具体的な金額については、一般的な医療保険の支給基準を参考にするとよいでしょう。

(傷病見舞金)

 役員が傷病の為に休務したときは、次のように見舞金を支給する。

1.傷病日数が引続き15日以上30日以下 150,000円
2.傷病日数が引続き30日を超える場合1ヵ月につき    100,000円
3.傷病日数が15日未満であっても入院し手術処置を受けねばならない場合は前記1号に準ずる。
4.傷害を被った場合には傷害事業保険の定める医療保険給付金を支給する。
5.障害により後遺障害を受けた場合は、傷害事業保険の定める後遺障害保険給付金を支給する。

 祝金は、従業員本人を対象とした数万円から10万円、親族に対するものは数千円から数万円程度が無難でしょう。たとえば、結婚祝い金だと、役付社員で5万円、一般社員で3万円といったところです。また、災害見舞金については、損壊区分(全壊、半壊、一部懐)などに応じてその費用の一部を補てんするのが一般的のようです。

・永続勤務記念品など

 創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件をすべて満たしていれば福利厚生費とし、給与として課税しなくてもよいことになっています。

創業記念等として

・その支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしい
・そのものの価額(処分見込価額により評価した価額)が1万円以下
・創業記念のように一定期間ごとに到来する記念に際し支給する記念品については、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに支給

 処分見込価額については、現実にはその評価が難しいことから、商品等の通常の小売販売価額(いわゆる現金正価)の60%相当額とすることも認められています。また、処分見込価額が1万円を超える記念品を支給する場合には、1万円を超える金額ではなくその全額が課税されるので注意が必要です。
 
 永年勤続として

・その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
・勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。
・同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること。

 社会通念上相当と認められる範囲としては、10年以上の勤続で10万円以内、30年以上の勤続で30万円以内程度が課税しなくても差し支えない目安とされているようです。

 なお、記念品の支給や旅行観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券や旅行券などを支給する場合には、その全額(商品券等の場合は券面額)が給与として課税されます。これは、商品券等は有効期限がなく、また金券ショップで換金できることから、実質的に金銭を支給したのと同様の効果があるためです。ただし、旅行券を支給してからおおむね1年以内に旅行をし、かつ旅行券の使用状況を管理している場合には給与課税しなくても差し支えないとされています。

 また、カタログの中から一定限度額まで自由に商品を社員が選んで、それを会社が購入して記念品とするような場合は、商品券等の支給と実態が何ら変わらないことから、このような場合にも給与課税が避けられないので、注意が必要です。

 それから、役員や従業員のうちから成績優秀者へ会社からの記念品を贈呈する場合のように、特定の者に支給する賞金や記念品については、給与所得として課税する必要があります。勤務成績が賞与等の算定の際に考慮されることが多いものですが、この賞金等と成績を考慮した賞与とは同じ性格であると考えられることによります。

・健康診断

 若い頃は気にもしない健康ですが、40歳も過ぎると日頃の健康管理が大切になってきます。やはり「早期発見、早期治療」が健康管理の王道で、それには定期的に健康診断を受診するしかありません。しかし、人間ドックを受診するとその費用は4-5万円にも及ぶので、その費用負担は決して軽くはありません。そこで登場するのが「合法的な魔法の給与」です。

 役員及び使用人の健康管理の必要から、雇用主に対して一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられていることもあり、税法上も、次の要件を満たすと、会社の福利厚生費とされ、その費用が給与等として課税されることはありません。

・役員や特定の地位にある人だけを対象としないこと
・一定年齢以上の希望者は全て検診が可能
・検診を受けた者の全てを対象としてその費用を負担する
・会社が直接施設に支払(立替精算は不可)
・2-3日以内が限度で、医療ツーリズムなどの豪華なものは不可

http://www.mit-morita.co.jp/img/freelink/k_r/tax/tax_repo05.pdf

・クラブ活動
・レクレーション費用
家族同伴型レクリエーションは、費用が高額でなければ家族分も福利厚生費
  
・社葬(http://www.makihon.co.jp/pdf/zeimu.pdf)

 家族経営の零細企業にとって、社長であるご主人様(奥様)の死は会社の清算にも等しいことですが、残された遺族へ「合法的な魔法の給与」を支給する最後の機会でもあります。

 それは、会社で葬儀費用を負担することにより遺族は葬儀費用を相続財産から支払う必要がなくなり、故人の相続財産をそのまま受け取ることが可能になるからです。また、葬儀費用分を退職金や弔慰金で受け取れば相続税が課税される可能性がありますが、社葬とすればこの問題は発生しません。

 税務上では、法人が、その役員又は使用人の社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、会社の費用として計上できる、とされています。ただし、次の点に注意する必要があります。

・社葬規定を作成
・死亡から葬儀までの間に社葬決定の取締役会議事録を作成
・過大な葬儀費用や葬儀費用外は退職給与等として課税

 つまり、事前に社葬規程を作成しておき、実際に死亡した際にはこの社葬規程に基づいて取締役会にて社葬決定の議事録を作成し、適正な金額を社葬費用として計上する、ということです。

 そして、葬儀にかかる費用の全てを会社の費用とできるわけではありません。大きくわけると、会社費用とできるのは、本葬当日の費用であり、遺族が負担すべきとされているものは、本葬後に発生する費用です。 具体的には、次のような区分になります。

 会社費用

・通夜及び本葬費用
・社葬の広告費用
・読経料
・飲食費
・送迎費
・供花(慶弔として福利厚生費)

 遺族負担

・死亡時の病院費用
・密葬費用
・戒名代
・墓石・仏壇

 なお、社葬として葬儀を実施した場合において、会社宛の香典を遺族が受け取ったとしても、これは非課税とされます。ただし、香典返しは香典を受取った者の負担とされることから、遺族が香典を受け取った場合、香典返しは会社の費用として計上することはできません。

 また、精進落としは、葬儀後の法要の一環として行われるものであり、基本的には遺族が負担すべき費用として、社葬費用には含まれません。しかし、会葬者の多くが取引先などの会社関係者である場合には、遺族やその親族が飲食されたものを除き、会社の交際費として取扱います。

・会社関係者分 社葬費
・社外関係者分 交際費

5.役人天国

 夕張市の例があるように、お役所だからとって必ずしも「親方日の丸だから絶対安心!」というわけにはいかないご時勢になりましたが、それでもまだまだ公務員が安定した身分にあるのは間違いありません。その代表例として世間を騒がせたのが「大阪市のヤミ給与問題」です。少し古くなりますが、当時の新聞コラムをご紹介しましょう。



 スーツも生保掛け金も 大阪市役所ヤミ公費300億円(2005年2月28日号)

 大阪市が、福利厚生の名目で職員のために湯水のごとく公費を使ってきたことが、昨年暮れから次々と発覚している。

 「税金泥棒! 大阪市民に謝罪せえ」「市役所は大阪市から出ていかんかい」こんな抗議の電話が連日、大阪市役所にかかり続けている。

 条例にないヤミの退職金や年金計約380万円(平均)を支給。このために、11年間で約300億円もの公費を投入した。

 在職中に死亡した場合に550万円が遺族に支払われる生命共済に職員3万7000人を加入させ、その掛け金を全額公費で負担。総額は22年間で約100億円に上る。

 数ある「お手盛り」のなかでも、「セコい!」と市民の不興を買ったのが、「カンプク(官服)」と呼ばれてきたスーツの支給だ。

 係長以下の2万3000人に2〜3年に一度ずつ支給してきた。上着とズボン2本で計3万〜35000円。昨年度は3億4500万円を市費負担した。

 市が百貨店などに発注して一人ずつ採寸するイージーオーダー。男性はズボン、女性はスラックスかスカートで、紺やグレーの4色のなかから好みの生地を選ぶ。一応、貸与だが、返す必要はない。

 姑息な悪知恵と批判

 何がセコいのか、と言えば、胸ポケットの外ぶたに「Osaka City」の文字が刺繍されている点だ。

 実はこの「カンプク」は1958年から支給されてきたが、80年代初め、大阪国税局から「給与の現物支給にあたる」と指摘されて所得課税されたことがある。

 それでも、「何とか支給を続けたい」と窮余の策として考え出されたのが、胸ポケットの外ぶたの刺繍。「外ぶた」だから、ポケットの内側に折り込めば、ただのスーツにしか見えない。ところが、この刺繍によって、制服としての体裁を整えたわけだ。

 外ぶたの工夫について、市厚生課は、

 「徴税や生活保護を担当する職員が市民の自宅を訪ねる際、身分を伏せてほしいという要望に応えるためだった」

 と理由を説明するが、考案されたのが所得課税の直後とあって、「姑息な悪知恵」と受け取る市民は多い。

 「貸与」にも疑問符が付く。1月には、給食調理員に支給した女性用の上着とスカートが、「大阪市教育委員会女子職員制服」と記されたタグ付きで、インターネット上で売られていたことも発覚した。

 懲りない職員たち

 大阪市は1月13日、新年度からスーツ支給の廃止を決めたが、職員はあきらめきれない。

 「嫁さんに『スーツ買うから』いうて、その金を飲み代に回せてたのに、その口実もばれてもうたうえに、廃止かい」

 ほかにも、非常識な「お手盛り」は枚挙にいとまがない。

 市長部局の職員は年約42000円を「市職員互助組合」に納め、その倍額の84000円を市から補助してもらって数々の優遇策を受けてきた。例えば、毎年、映画鑑賞やスポーツ観戦に使える共通利用券(21000円分)がもらえる。「おみやげ」と称して、電子炊飯器やホットプレートなどの家電製品を昨年度までは毎年一品ずつもらえていた。

 さらに、子供が小中高校に入るたびに「祝い金」として、45000円ずつ出ていたが、家族に言わず、飲み代に回していたある職員は「祝い金のことが新聞に出た朝、『この金なによ!』って嫁にたたき起こされた」とこぼす。

 市は弁護士の大平光代助役をトップに改革委員会をつくり、スーツだけでなく、年180億円分の福利厚生・手当を新年度から廃止する方針を1月に発表した。

 それでも、職員たちは懲りていない。

 「どんどん福利厚生や手当がなくなって小遣いが減る。ホンマはこれから、スーツの支給が必要になるんちゃうかな?」



 如何でしたか?「役人天国」とは、このようなことをいうのでしょうね。「絶対に潰れることはない」という強烈な「親方日の丸」の意識が、ここまでのモラルハザードを起こしてしまう、という見本の様な出来事でした。最近だと、日本航空が同じような状況だったのでしょうね。

 さて、このコラムで注目すべきなのは、胸ポケットの外ぶたに「Osaka City」の文字を刺繍する程度で、制服として非課税になっている点です。これが拡大解釈されて一人歩きしている事実は否めません。

 本来は、背広など私服としても着用できるものを制服と称して支給しても、これは、所得税法上非課税とされる制服等には当たらないことから、給与等として課税されます。

 しかし、何をもって「制服」とするかはかなりグレーゾーンで、如何様にも解釈できます。国税庁のHPでは、事務服や作業服等の支給を非課税とするための規定を以下のように記載しています。

・それが専ら勤務する場所において通常の職務を行う上で着用するもの
・私用には着用しない又は着用できないものであること
・事務服等の支給又は貸与が、その職場に属する者の全員又は一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるもの
・制服等として支給され、職務の遂行に当たり現に着用されているものであっても、これらの要件を満たさないものは、非課税とされる制服等には当たらない

 これを素直に普通に解釈すると、大阪市の「制服」は非課税の対象外のはずです。しかし、官官癒着でもないのでしょうが、文字を刺繍する程度で非課税とされるのですから、その線引きはかなりグレーのようです。

 これをもってどうされるかは事業主の判断になりますが、家族経営の零細企業で、しかも自宅を本社として登記しているのであれば、大阪市のように文字を刺繍する程度で非課税の「制服」とするのは、かなり厳しいと考えますが、如何でしょうか。

6.出張

 遠方への出張が多いお仕事であれば、出張旅費規定を作成して、出張手当を支給されることをお勧めします。

 出張手当とは、一般的に、役員や従業員が勤務地を離れて業務に従事する出張時に、直接的に必要な交通費や宿泊費以外に出張に伴う精神・肉体的疲労に対する慰労や諸雑費(昼食など)の補填といった意味合いで支給する、とされています。この出張手当はかなりの優れもので、以下の特徴があります。

・旅費交通費として会社の費用となる
・出張手当は給与等ではないので、所得税等や社会保険が課されない
・出張手当は給与等ではないので、消費税の仕入税額控除の対象となる

 出張手当は、社会通念上妥当な範囲に限り、所得税等が非課税になりますが、具体的に出張手当はどれくらいで設定すればよいのでしょうか。そこで参考になるのが、公務員の旅費規定です。 これを参考にして、出張手当の金額を決定すればよいでしょう。

 旅費は、所得税法上において実費精算を求められていません。つまり、実際に発生した金額ではなく、旅費規定で決められた金額をもって精算することも可能である、ということです。これは、旅費規定においては正規の運賃や宿泊費の金額をもって規定し、実際は割引切符や安いビジネスホテルを利用してその差額が発生したとしても、税務上これが問題になることはない、ということです。

 注意点としては、旅費規定がなかったり、あいまいな内容だったり、その金額が社会通念上妥当な範囲の金額を超えていてあまりに高額な場合には認められないこともあります。旅費規定作り方としては、役員・従業員などの社内地位によって格差を設け、国内出張・海外出張別や距離や場所に応じて規程を設定するとよいでしょう。

・社長 10,000円
・役員 7,000円
・部長 3,000円
・課長 2,500円
・社員 2,000円

日当の場合は、社長で3000〜5000円、役員は2000円〜4000円くらいですね。

食事代 4000円/夜
外出を半日日当に(2000円程度が妥当か)

・視察旅行・研修旅行

 研修旅行が会社の業務を行うために直接必要な場合には、その費用は給与として課税されません。

 しかし、直接必要でない場合には、研修旅行の費用が給与として課税されます。また、研修旅行の費用の中に会社の業務を行うために直接必要な部分と直接必要でない部分が混在している場合には、直接必要でない部分の費用は、参加する人の給与として課税されます。

 例えば、次のような研修旅行は、原則として、会社の業務を行うために直接必要なものとはなりません。

・同業者団体の主催する、主に観光旅行を目的とした団体旅行
・旅行のあっせん業者などが主催する団体旅行
・観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅行

 給与課税のリスクを回避するためには、次の点に注意し、観光や慰安ではなく、あくまで業務の必要性から実施していることを主張する必要があります。

・日程の半分以上は仕事関係
・報告書を作成
・関係資料を保存
・旅程表
・参加者名簿
・テキストや資料
・視察場所の写真など

7.通勤

「自宅を本社」として法人登記している家族経営の零細企業を前提としてご案内しているので、あなたが「通勤」することは基本的にないはずですが、何らかの理由により通勤する必要がある場合には、是非、通勤手当を支給してください。というのは、役員や使用人に通常の給与に加算して支給する通勤手当などは、一定の限度額まで所得税等が非課税になるからです。非課税となる限度額を超えて通勤手当を支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されます。また、通勤手当は所得税等こそ非課税ですが、社会保険(年金・健康保険)では計算対象に含まれてしまうので、残念ながら「合法的な魔法の給与」としてはこれまでご紹介してきたものと比較すると使い勝手は若干悪くなります。

 電車やバスだけを利用して通勤する場合に非課税となる金額は、月額10万円を限度として、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額になります。その必要性から新幹線を利用する場合、限度額の範囲内で非課税となりますが、グリーン車の利用は非課税の対象外になります。

 しかし、このサイトをご覧頂いている方は、仮に通勤することがあっても、電車やバスを利用するほどの遠距離通勤ではなく、マイカーや自転車などの交通用具だけを利用した近距離通勤をする人が殆どでしょうから、これについてもご案内します。

 マイカーなどによる通勤の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて定められていて、2キロ以上10キロ未満の場合は4100円になります。10キロ以上の場合も距離に応じてそれぞれ非課税となる限度額が定められていますが、ここでは割愛します。なお、2キロ未満の場合だと、たとえ通勤手当として支給しても非課税にはならないので注意が必要です。

 また、パートやアルバイトなど短期雇用でも、通勤手当などの非課税となる限度額は、月を単位にして計算します。









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