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税理士選びのポイントを鎌倉藤沢密着の現役税理士が伝授

税理士選びのポイント 税理士社労士事務所 ふじっくす

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間違いだらけの税理士選び 知らないでは済まされない7つのポイント

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知らないでは済まされない7つのポイント !!


税理士選びとは

 税理士を電話帳広告だけを見て決めてしまう人は、さすがにいないでしょう。しかし、知合いや銀行に紹介されたからと、いとも簡単に顧問税理士を決めてしまう人は結構多いものです。こういった人たちは、税理士を「単に税金を計算するだけの人」と考えています。これはこれで一つの考え方であり、実際、税金の計算しかしない(出来ない?)税理士も少なくありません。

 税理士の署名捺印がない税務申告書もかなりありますが、税務署側が受ける心証はやはり違うようです。こうした現状を踏まえ、少なくとも決算の時だけはお金を払って税理士に依頼して、「申告書に署名捺印だけはもらっておこう」と考える人も少なくありません。いわゆる「安心料」のレベルです。こうした考えをしていると、社員を雇う時には2度3度と面接して、場合によっては素行調査までしてやっと採用するのに、せいぜい料金比較をする程度で顧問税理士をいとも簡単に決めてしまうことができるのです。

 税理士の選定が、巨額の借金をして実施する設備投資に匹敵するほど重要であるということを、事業で成功を収める人は、充分に理解しています。中小零細企業にとっては、顧問税理士の出来、不出来が、即、会社の命運に直結することも少なくありません。社会的常識はあるのか、礼儀はわきまえているのか、この業界には、学生時代から勉強だけをして実社会を経験せず、そのまま会計事務所に入所してきた者が多く、挨拶すらろくに出来ない者も少なくありません。

 税理士を選ぶにあたっては、経営者自らがどんな人物なのか、何度も面接をして見極めなければならないのです。経理担当者も含めて、複数の関係者と一緒になって判断すべきでしょう。このような過程を経て、様々な税理士を吟味し、この人なら、とお願いできる人物を顧問税理士にすべきです。他の税理士にその税理士の評判を聞ける機会があれば、やっかみもあるので話半分としても、ある程度の参考にはなるでしょう。

 税理士などの専門家をうまく活用できる手腕が社長にあるか否かで、会社の命運はほぼ決まってしまうと云っても過言ではありません。目先の費用を節約しようと、会社登記を社長自らがするような会社では、まず明るい未来はないでしょう。営業戦略の構築や新商品の開発など、社長としてすべき本分を見極めず、目先の費用節約に貴重な時間と思考を削いでいるようでは、社長の器ではないので、起業は止めておいた方が無難でしょう。その人に染付いた本能とでもいうべきこの思考パターンは、おそらくこの先も変わることはないのです。

 たとえお金に多少の余裕ができたとしても、「お金で専門家を活用して、人に任せられるものは人に任せ、自分にしか出来ない社長としてすべき本分に集中する」という発想に至ることはまずありません。「資金繰りが苦しくて」というのも本音でしょうが、そういったものも含めて資金計画を立てたうえで開業すべきなのです。

 イスが必要となったときに、のこぎりと木を買ってきて、わざわざ自分で作りますか?日曜大工を趣味としている人が採算を度外視して作る場合を除けば、まずいないでしょう。それは、お店で買ったほうが、より良いものがより安く手に入ると、皆が分かっているからです。しかし、この発想をビジネスの世界で出来ない人は少なくありません。

 税理士探しは「出会い」です。税理士は、あなたのお金や事業に関するアドバイザーであり、ホームドクターのような存在であるべきで、単なる税金の計算屋であってはならないのです。とかくサービスの内容や料金にばかり関心がいきがちになりますが、税理士選びには、志向や相性なども非常に重要な要素になります。結婚相手を学歴・年収・ルックスだけ選んだりしませんよね。税理士を探すのに労を惜しんではいけません。

 税理士に対するニーズは顧問先によって異なるので、どのタイプの税理士が良いかということは一概には言えません。むしろ自分にはどの税理士が合うかという視点を持った方がよいでしょう。以下、税理士を選択するポイントを挙げてみました。税理士選びのお役に立てれば幸いです。

1 税理士になるまで

 税理士について、弁護士が司法試験に合格しなければなれないように、税理士も税理士試験に合格しなければなれないものだと考えている人が多いようです。たしかに弁護士の場合は、一部の例外を除くと、司法試験に合格しないと弁護士としての資格は得られませんが、税理士の場合は、少し事情が異なります。

 税理士の場合、税理士試験に合格して資格を取得する人の割合は、わずか30〜40%に過ぎません。では、残りの人達はどうやって資格を取得したのでしょうか。実は、この税理士資格を取得するまでの過程が、税理士選びの最初の大切なポイントになります。

国家試験合格者

 税理士試験に合格して税理士になった人のことです。税理士試験は、会計2科目と税法3科目の合計5科目に合格する必要があります。

 税理士という資格は、そもそも税務署等を退職した人のために、彼らの老後の生活を保障する意味合いで創設されたといわれています。このような背景から、外部からあまり参入されることのないようにと、極端に試験を難しくする必要がありました。しかし、この難関を突破する人が次々と現れてきてしまったため、より点数を取り難い試験にしなくてはならなくなったのです。

 税理士試験は、その結果として、実務で求められる能力を問うものではなく、試験のための試験(税理士供給を制限するための試験)に陥っているのが現状です。この点は、他の資格試験でも同じようなもののようですが、試験が実務からかけ離れてしまっているという点については、税理士試験は、群を抜いているようです。具体的な例を挙げると、

・ 税理士試験においては、時間内では到底解答することが出来ない膨大なボリュームの問題が出題される。たとえ出題者が受験したとしても、全問を解答するのはおそらく厳しいであろう。それ程のボリュームの問題が出題されるため、簡単な問題は確実におさえ、難しい問題は最初から手を出さず貴重な時間を失わない、という問題選別能力が合否に大きな影響がある。

・ 税理士試験では、正解が出来ないように様々な仕掛けが施してある。例えば、問題用紙の文章では千円単位なのに表に記載されている単位は万円単位、さらに解答用紙は円単位だったりすることがある。まずこの罠に気付くことができるのか、そして運よくこれに気付くことができたとして、極端に時間的制約が課されている試験において、間違いなく計算ができるのか、といった受験技術を鍛錬しなければならない。

・ 税理士試験にも記述問題がある。本来は、手続処理や課税の判断など、計算では問うことの出来ない内容についての設問であるべきだが、大半の設問は、計算式で簡単に表現出来る内容を、何故かしら延々と文章で記述しなければならない、というものである。納税額が計算できればいいはずなのに、この計算過程をまわりくどい文章で記述しなければならない。この文章は、考えながら記述していたのでは、時間が不足するので、あらかじめ税理士受験予備校が作成した模範表現を暗記しておく必要がある。ちなみに、合格者の大半は、暗記した文章表現の殆ど全てを試験が終われば忘れてしまうが、実務に困ることは全然ない。何故なら実務では、内容を理解し計算ができればよいのであって、その過程をわざわざ文章にする必要などは全くないからである。

 税理士試験においては、このように、試験に解答するためだけの受験技術の習得が、合格するためには極めて重要になります。勉強時間の7〜8割、もしくはそれ以上の時間を、これらの受験技術の習得のために費やさなければなりません。これは、どれほど実務に精通した優秀な現役税理士であっても、いきなりこの試験を受験したら、まず合格は出来ない、ということです。

 税理士試験は確かに試験自体は難関ですが、それは単に試験が難関なだけであって、合格に大きく影響を及ぼす受験技術の習得は、実務とは全く関係がありません。このため、税理士試験に合格しても、それが即、税法実務に精通しているということを意味するわけではなく、必要となる最低限の知識がある、といった程度のものなのです。

 税理士試験は酒税や国税徴収法といった一般的な税理士が担う実務とは殆ど関係のない税法科目での受験も可能です。このような科目での受験は、実務に関係がないという観点からのみで判断すると、もし税理士試験の受験科目に英語や数学があれば、これらを受験して合格したのと大差がない、と極論できるかもしれません。

 税理士試験が、このように、試験のための試験に陥っている状況は、他の士業の試験でも同じようですが、税理士試験は特にひどいと云われています。

税務署OB

 税理士全体の5〜6割を占めるとも云われ、税理士業界での一大勢力です。税務署等の職員には一定期間以上勤務すると事実上無試験で税理士になれるという特典があります。この特典により、税務署等の職員の多くは、定年退官後、税理士としての登録をします。これが税理士全体の平均年齢を押し上げ、他の士業者と比較すると平均年齢が極めて高くなる(税理士会のデータでは60歳超)原因になっています。

 税理士の中でも税務署出身となると、さぞ税法に精通しているのだろうと普通は思ってしまうでしょう。しかし、税務署も組織であり、皆がみな、課税部門(税務調査などの現場)で仕事をしているわけではありません。当然、人事課や総務課などの非課税部門で働いていた人もいるのです。しかし、このように税法と直接関係のない仕事をしていた人達にも「税務署勤めであった」ということだけで税理士の資格が付与されてしまいます。ちなみに、市役所で市民課税を担当していた人などにもこの特典は適用されますが、市役所勤務という職務上、税理士の主要業務である国税(法人税や所得税など)業務に携わることは全くありません。

 税理士になるために税務署勤めをしているわけではないので、税務署においては、様々な税金の実務が経験できるようと、満遍なく各課税部門へ人事異動されるわけではありません。一旦、法人税なら法人税、酒税なら酒税を担当すると、これに長らく携わることになります。その結果、たとえば所得税の出身者は法人税や相続税の実務を経験する機会はほとんどなく、当然のこととして、自分が担当した経験のない税法は、あまり詳しくありません。

 ただ、税務署OBの税理士の場合、それぞれが得意とする税法をカバーしあって、税務署OBの税理士同士でお互いに連携を取り合って仕事をしている場合も多いようです。また、試験合格組の税理士も、その試験制度からも全ての税法に精通しているわけではないので、同じように必要に応じて知合いの税理士と連携して業務に対応しています。ですから、税務署OBの税理士だからといって自分がかつて担当した税法しか対応できないという訳ではないようです。しかし、試験合格組の税理士と比較すると、税法の知識に偏りが強い傾向は否めないようです。また、税理士に対して顧問先から損害賠償が請求されるのは、税目では消費税がらみが最も多いのですが、訴えられる相手は税務署OBの税理士が多いというデータがあるようです。

 税務署OBの税理士は、税務署長や国税局長などのポストで退官した出世組(キャリア)と現場の調査官で終わる現場組(ノンキャリア)とに大きく分けることができます。納税者が出世組に期待するものは何かというと、税務署に対して顔が利く、影響力がある、といった用心棒的な役割ではないでしょうか。その影響力で黒いものでも白くできる、といったことがまかり通るのであれば、それはそれで大問題ですが、納税者が高い顧問料を払って出世組に期待しているのは、ほとんどがこの一点に尽きるようです。

 しかし、税務署の大物OBが税務調査に睨みが効くのかというと甚だ疑問の残るところです。その可能性が全くないわけではないでしょう。税務署を署長などの役職で退職したばかりだと、元直属の部下が税務調査にくれば、多少の融通は利くのかもしれません。しかし、辞めて2〜3年も経つと、特別に世話になった人以外は、現役の税務署員としては自分の成績の方が大事(税務署では、追徴課税額が多い者ほど出世する)であり、次第に相手にしなくなります。どこの世界でも現役が強いのは当たり前で、下手な便宜をOBに払えば、逆に自分の身が危うくなるだけです。納税者が期待するほどの効果はなく、さしずめ高額な顧問料は、ただの精神安定剤に過ぎないと云えるのかもしれません。

 税理士として、税務署OBに実務としての働きを期待するのであれば、出世組よりもむしろ現場組の方がよいのかもしれません。出世組にとって、退官直前の10年以上の期間は、組織運営や人事考課などが主な仕事であり、現場に出ることは基本的にないので、税務調査などの実務には疎くなっていることが多いようです。こうした人は、申告書や決算書等は書けないか、書けても面倒なので他の税理士に外注している人も少なくありません。これに対して、現場組は退職直前まで実務に携わっており、税務調査の表も裏も知り抜いています。どこに調査の糸口があり、問題となるのはどういった事項なのかについては精通しています。どの程度まで把握すれば更正するのか、また、どこまで心証を得られれば調査の対象としないのか、相手の手の内を知り尽くした彼らのノウハウでもあります。

 ただし、長く課税側(税務署側)の立場であったことから、課税側としての考えが抜けない方も少なくないようです。税務調査においては、納税者側の立場ではなく逆に課税側の立場になって、税務署と一緒になって納税者の説得にあたる人も散見されます。当たり前のことですが、税務調査では、納税者の立場に立って交渉してくれる税理士を選ぶべきでしょう。

 税務署というところは、何か出来事が起きた後の結果に対して判断を下すのが仕事であり、事前に未来を予想して節税のために何をすべきかといったシミュレーションをするところではありません。もちろん税務署での無料相談も、節税に関するアドバイスは受けられません。長きにわたって税務署という役所にいた人は、退官の日まで税金を増やすことのみに懸命になっていたわけですから、正義感が強く真面目な人ほど節税を脱税と同一視する傾向にあるようです。いきなり正反対の節税の相談を持ちかけられても、そもそも根本的な発想が違っており、土台無理なことなのかもしれません。このあたりが、税務署OB税理士の一番の特徴といえるのかもしれません。

 また、殆どの人が定年退官後であるため年齢も相対的に高く、年金を受給している身でもあり、税理士業は第二の人生と考えて、仕事に淡白になってしまっている人も一定割合存在しているようです。

ダブルマスター

 税理士試験の免除には幾つかありますが、最も代表的なものは、大学院修士課程を2つ修了すると税理士試験の5科目全てが免除される「ダブルマスター」と呼ばれるものです。法律学又は財政学の修士となれば税法3科目の試験が、商学の修士となれば会計2科目の試験が、それぞれ全て免除されます。つまり、全くの無試験で税理士になれてしまうのです。

 税理士試験が免除されるこの制度で問題なのは、大学院での専攻が、刑事訴訟法など税法と全く関係のないものであったとしても税法科目が、マーケティング論など会計と全く関係のないものであったとしても会計科目が、それぞれ全て免除されてしまう点にあります。そして、これ以上に問題とされているのは、昨今の経営難から、税理士試験の免除をうたい文句としてこれを商売とし、金さえ払えば簡単に入学させてしまう大学院が存在していることです。この手の大学院としては都内のT大・S大・K大の3私大が有名で、会計事務所の2世の多くがこの制度を利用して税理士資格を取得しているといわれています。

 税理士法が平成14年に改正されました。これは、このようにダブルマスターによる税理士試験免除には様々な問題があったためです。現在では、ダブルマスターであっても全ての試験が免除されることはなく、会計科目と税法科目それぞれ一科目ずつは税理士試験に合格しなければなりません。かつ、大学院での修士論文の研究テーマは、会計科目の免除については会計、税法科目の免除については税法に関するものであることという改正がありました。この改正により、現在では、大学院を利用して全くの無試験で税理士になる道は閉ざされています。

 税理士資格を大学院の修士学位により取得したとしても、大学院での研究テーマが実務に直結するものであれば、少なくてもその分野については、それなりの造詣があるでしょう。しかし、それは、ある税法(法人税など)のある特定分野(役員給与課税など)を深く掘り下げて研究しているにすぎません。大学院を修了しているだけでは、主要税法の一般的基礎知識を満遍なく習得していることの裏付けにはなりません。

公認会計士・弁護士

 税理士としての仕事がしたければ、会計士は、登録するだけで税理士になれますが、本来、会計士の主たる業務は財務諸表の会計監査であり、試験科目も自ずと会計監査に関するものが中心になっています。

 税理士として活動するにあたって必須となる税法についての試験科目は、監査業務で必要とされる法人税があるだけ、しかも「法人税の全体について」というよりも、「法人税のうち、大企業を会計監査する上で必要となる部分についてのみの知識を有している」といっても差支えないでしょう。もちろん、所得税や相続税などについては、会計士としての業務で取扱うことはありません。

 税理士と会計士とでは、そもそも担当する分野が異なっているのですが、現在の制度においては、会計士は登録手続さえすれば自動的に税理士としての業務も出来ることになっているのです。

 税理士の仕事が積極的にしたいわけでなく、結果として、税理士の仕事をせざるを得ない、というのが実情のようです。現在は会計士個人では会計監査の仕事は事実上できないので、監査法人という組織の呪縛を嫌ってどうしても独立したいのであれば、資格は会計士だけど仕事は税理士、という道を選ぶことになるからです。

 会計士が個人として会計監査の仕事ができないのは 会計士が個人で会計監査をすると「会社が会計士に監査報酬をはずみ、会計士は赤字決算であるにもかかわらず黒字決算の監査証明を作成して会社の粉飾決算に加担する」という構図が醸成されやすく、会社と会計士とが癒着しやすいからです。

 実際にこうした問題が発覚し、これを受けて会計士の個人事務所が会計監査の業務を請け負うことはできなくなりました。組織ぐるみで粉飾決算に加担していた、という事例もあるので、監査法人であれば癒着の土壌が形成されないとは言い切れませんが、少なくとも、個人事務所よりは癒着しにくい、とはいえるでしょう。
  
 税理士としての仕事は弁護士の資格があれば可能ですが、弁護士の場合は、資格は弁護士だけど仕事は税理士、という話は聞いたことがありません。最難関の司法試験に合格したのに、税理士の仕事をせざるを得ない会計士のような事情が存在しないからです。税理士の仕事がしたいのであれば、わざわざ司法試験に挑む必要はなく、税理士試験を受験すればよいのです。

ニセ税理士

 ブラックジャックなら話は別なのでしょうが、医者という資格の場合、ニセ医者だと分かっていて診療を受ける物好きはまずいません。しかし、税理士の場合は少し事情が異なります。「税理士だと思って依頼したのに、実はニセ税理士だった」ということはあまりなく、むしろ依頼する側も無資格者であることを最初から承知していることのほうが一般的のようです。

 ニセ税理士も、何も好き好んで最初からニセ税理士をやろうと考えていたわけではありません。会計事務所に勤めて実務経験を積み上げつつ、税理士試験の合格に向けて勉強を続けているが、なかなか合格できない会計事務所の職員又は元職員、というのがその平均的な人物像のようです。さすがに全く素養のない人がしているケースないようです。

 ニセ税理士の中には会計事務所での実務経験が20〜30年といった強者もおり、税理士試験に合格したばかりの実務経験が浅い若葉マークの税理士よりも、こと実務に関しては断然詳しいといったことが往々にしてあります。こうしたことは、なにも税理士限ったことではなく、弁護士をはじめとした他の士業でも状況は同じのようですが。

 ニセ税理士には「ニセ」であるが故の負い目があるため、仕事は一生懸命やるけれども、料金は世間相場よりも安くせざるを得ません。このため、経営者にはすこぶる評判の良いケースもあります。そうしたことから、依頼する側でも、実務をきちんとしてくれるのであれば、何かと便利なニセ税理士で済ませてしまおうと考える人も出てきてしまうわけです。

 ニセ税理士の場合、自分では申告書に署名捺印ができないので、これを形式上だけの所長や稼げない知合いの税理士にお願いすることがあります。いわゆる「名義貸し」というものです。これにより、名義を貸した税理士にも少なからぬ収入が入ります。また、そもそも顧問先がニセ税理士であることを承知しているのであれば、税理士の署名捺印欄を空欄にして、つまり、関与税理士はおらず、事業者自らが申告書を作成したことにして提出してしまえば、書類上からはニセ税理士の関与が表面化することはまずありません。

 ニセ税理士は、ヤミ商売の宿命ゆえ、物事が表沙汰になることを極端に恐れます。税の世界というのは白黒はっきり出来ないグレーな部分が多分にありますが、税務署と渡り合うことの出来ない(渡り合えば、ニセであることがばれてしまう)ニセ税理士は、税務署と揉め事が極力起きないようにと、納付税額を多く計算する傾向にあるようです。その結果、顧問料は安くあげたつもりでいても、それ以上の税金を納付させられているのかもしれません。ニセ税理士を利用して顧問料を安くあげていると勘違いしている社長さんはくれぐれもご用心を !!

結論は

 税理士という資格について、国家試験合格者、税務署OB、ダブルマスター、公認会計士と弁護士、そしてご参考までにということでニセ税理士と、それぞれの平均像についてご紹介しました。もちろん多少の例外はあるでしょうが、母集団の平均値として考えた場合、大きく外れていることはないでしょう。では、この中でどの人に顧問税理士をお願いすればよいのでしょうか?

 一流大学を卒業していれば優秀かといえば、必ずしもそうとは言い切れませんし、学歴がなくても世の中で大成している人は数多く存在しています。また、一流大学に合格するための受験勉強は大変なものですが、実社会において受験勉強で学んだ内容がそのまま役立つことはほとんどありません。しかし、母集団の平均値として考えた場合、一流大学の卒業生が優秀であるということは、誰もが認めるところです。

 彼らは、厳しい受験戦争を勝抜いていけるだけの学習能力があったからこそ、合格を勝ち得ることができたのです。受験勉強の中味自体には殆ど意味がありませんが、合格とは、その学習能力があることの証の一つとなります。大学受験においては、その学習能力が受験勉強に向けられただけのことであって、彼らは、その後の人生において次々と降りかかってくる課題に対しても、その学習能力を発揮して立ち向かっていくことでしょう。

 税理士試験にもこれと同じことが当てはまります。前述した税理士試験の「試験としてのあり方」の問題はともかくとして、税理士試験の合格者には難関試験を突破するだけの学習能力があった、ということです。税法は毎年のように改正され複雑化していきますが、税理士試験に合格したということは、これに対応するための土台となる学習能力がある、ということを示しています。また、学習能力の証明という点では、それが税理士試験でなくても構わないわけで、公認会計士試験や税務署の採用試験であったとしても、なんの問題もありません。ただし、都内のT大・S大・K大の3私大に代表されるダブルマスター税理士に関しては、この学習能力の証明がなされておらず、全くの未知数であると云わざるを得ないでしょう。

 税理士の資格をまがりなりにも得ているということは、一定の学習能力があったからにほかありません。しかし、学習能力があることと、日々学習をし研鑚を積んでいるかは、全くの別問題です。これを見分けることが、税理士を選ぶに当たっての皆さんの課題となります。大切なのは、資格取得後のあり方なのです。

 税理士になった経緯は、税理士を評価する上での参考にこそなりますが、これのみで判断を下すのは極めて危険です。退官後に担当以外の税法に研鑚を積まれている税務署OBもいますし、公認会計士でも税法をよく勉強されている方もいます。また、試験は資格取得のための手段にすぎないと割り切って、酒税や国税徴収法で受験はしたけれども、資格取得後は受験科目になかった税法を実務という観点から習得されている方も多くいらっしゃいます。

 税理士を選ぶに当たっては、税理士になった経緯を参考にしつつも「資格取得後も顧問先のニーズに対応できるようにと研鑚を続けているか」という現在の姿勢で判断することが重要となります。税法は毎年改正され、顧問先からの要求も多様化しています。税理士になっただけでは不十分で、その後もしっかり研鑚を続けている税理士を選ぶことが大切なのです。

2 税理士事務所の違い

 税理士には様々な経歴の人がいて、その経歴によって長所と短所があることをご理解頂けましたか。そして、次に押さえておいて頂きたいポイントは、税理士事務所の違いです。

 税理士事務所といっても、規模の大小、所長の年齢や性別、所在地の遠近など、様々です。これらの違いを理解することは、税理士選びに当たって、欠かすことが出来ません。

税理士事務所の規模

 税理士事務所の規模の大小は、最初に気になる事柄です。規模の大きい税理士事務所と小さい税理士事務所のどちらがいいのか、判断の迷うところでしょう。まず、大規模事務所の一般的な特徴としては、

・ 税務の各分野に対して、それぞれに精通している専門家を多く抱えている
・ 事務所として多くの事例があり、幅広いノウハウがある
・ 代表税理士に万一のことがあっても事務所に継続性がある
・ 担当者が変更となることが多い
・ サービスが画一的
・ 質問の回答が遅くなりがち

といったところがあげられます。

 税理士事務所でも大規模なものは、優秀な人材も多く、そもそも、グローバル企業については、個人の税理士・会計士で対応することはまず不可能です。一人で全世界の会計や税務に対応することは厳しいので、そのような企業は大手監査法人系のタックス部門にご依頼することをお勧めいたします。

 しかし、税理士を多く抱えるため人件費が高くなり、かつそれに応じた事務所スペースも設備も必要です。このため、経費としての固定費が高くなる傾向にあり、その結果、顧問料もそれ相応の金額にせざるを得ません。また大手監査法人系を中心に大規模事務所ほど高度な税務判断が可能となりますが、顧問料もこれに比例して高くなるため、あなたの会社が「常に高度な税務判断を必要としているのか」を検討する必要があるでしょう。

 税理士事務所は、ある程度の規模になっても、その命運は所長税理士の営業力にかかっています。所長税理士は実務に直接携わる時間があまりなく、実務は税理士の資格がない副所長が一手に担っているということも少なくありません。

 税理士事務所に対する顧問先の不満として「税理士の先生が来てくれない」「経理の知識があまりないのに、税理士がきちんと説明してくれない」等が聞かれますが、税理士事務所も規模によって特徴があります。たとえば、大規模事務所の場合、月次監査は税理士本人ではなく職員が月に1度顧問先を訪れ、帳簿や伝票をチェックして振替伝票を作成し、その際に前月までの資料の内容を説明するのが一般的です。担当者はまだこれからの若い所員で、所長先生にはめったにお目にかかれない、といったこともあります。

 税理士本人と直接面会したり、訪問してもらいやすいのが、小規模事務所の特徴です。高度な税務判断を単独で実施するのは厳しい場合もありますが、これをカバーするために、大規模事務所と提携している税理士もいるようです。

 税理士事務所のうち、規模の拡大を志向して組織的に事業を行なっていきたい会社は大規模事務所を、むやみに規模の拡大を追い求めずに身の丈に応じた事業展開を基本方針としている会社は小規模事務所を、それぞれ選択するのがよいのかもしれません。

 税理士事務所の規模の大小について、以上はあくまでも一般的な話であり、大規模事務所といっても単に職員が多いだけで、顧問料に相応した高度な業務体制が構築されていない場合も散見されます。女の子がヴィトンやエルメスのブランドに憧れるが如く、これと同じ発想で、単に規模の大きい会計事務所にお願いすれば安心だと考えるのはとても危険です。また、小規模事務所についても然りです。大切なことは、話合いを深めることにより、依頼する側が単に規模の大小だけに囚われず、どのような税理士事務所なのかを見極めることです。

 税理士事務所の職員数が多い場合、優秀な人材とそうでない人材の差が激しくなる傾向にあります。独立志向が強いからこそ税理士という資格を取得したのであって、税理士はそもそも組織化になじまない人種です。品質の標準化に向けて種々の試みがなされてはいるものの、どれだけ教育を施しても、優秀な者から退職し独立していくという構造的な問題が解決されない限り、税理士事務所にはスケールメリットがなかなか働きません。

 税理士事務所が大規模だからといって、全員であなたの会社を担当するわけではありません。基本的にはその中の一人が担当者となるのです。小規模事務所であれば所長税理士が直接担当することになるでしょう。つまり、大規模事務所でも、小規模事務所でも、「あなたの会社と直接向合う担当者はひとりだけ」ということです。

 税理士事務所の規模の大小よりも、顧問先の命運は、担当する人物次第なので、「どのような人が担当になるのか」ということが一番重要になります。そういった意味では、誰が担当者となるのか事前にハッキリしない大規模事務所より、所長税理士がそのまま担当者となる小規模事務所に絞って税理士事務所を探した方が、リスクは低いのかもしれません。

近所か遠方か

 税理士事務所を選ぶにあたって、「近い方が来てもらい易く行き易いので、近いに越したことはない」と考えるのか、「電話やFAXはもちろんメールやインターネットを利用して会計データを送受信できる通信環境が整えられている現代において、そう遠くなければ問題ない」と考えるのか、判断の分かれるところです。

 税理士と経営全般についての相談をする機会が多い小さな会社は、やはり直接会って話したほうが意思の疎通が図りやすいでしょう。一方、税務に限定して顧問を依頼している大きな会社は、そう度々会う必要もなく、多少は離れていても必要な連絡が取れれば特に問題はないのかもしれません。

 税理士選びにおいて立地はあくまでもひとつの要素であり、会社の置かれている状況により判断すればよいでしょう。

年齢

 税理士のなかでも、一般的に年配の人は、長い経験があり頼りがいや安心感がありますが、自分の経験したことがない事例については、消極的になることが多いようです。一方、若い税理士は、変化への対応が柔軟にでき、何事にもチャレンジしていくという積極性やフットワークの軽さがありますが、段取りの悪さが見受けられることもあります。

 もちろん、年配の税理士でも非常に考え方が新しく、変化への対応が柔軟な方もいらっしゃいますし、若い税理士でもガチガチの石頭もいますので、一概には云えません。むしろ、若いか年配かというよりは、価値観が同じで意思疎通が図り易い世代の近い税理士の方がよいのかもしれません。

 また、若い税理士と年配の経営者という組合せはさほど問題がありませんが、その逆で、年配の税理士に若い経営者という組合せは、上手くいかないことが多いようです。

性別

 税理士の世界もご他聞に漏れず男社会であり、その中で男性税理士を相手に伍して頑張っている女性税理士は優秀であることが多いようです。「女性の税理士はきめ細やかな対応をする」という評価がある一方で、「税務調査などの交渉ごとに弱い」という声もあります。女性の経営者は女性の税理士を好むという傾向もあるようなので、同性を選ぶというのも選択基準のひとつかもしれません。

3 税理士にしてほしいこと

 税理士に依頼したいことは何ですか?税理士選びにあたっては、本来、まず最初にこれを整理する必要があります。これにより、あなたにとっての最適な税理士が異なってくるからです。では早速「税理士にしてほしいこと」について考えてみましょう。

 税理士に依頼するのは、税務申告書の作成だけですか?税理士に日々の会計記帳もお願いしたいのですか?税理士へお願いしたいことは人それぞれでしょうが、「税務調査の時に用心棒として立ち会ってほしい」というのがやはり税理士に対する最も強い要望でしょう。税務調査のときほど、税理士を頼りに感じることはありません。緊張の連続となる税務調査は、社長にとって、心身両方に渡りとても大きな負担となりますが、それだけに税理士としては腕の見せ所でもあるのです。事前準備から予行演習まで、万全の体制を整えておく必要があります。

 税理士の中でも、このような税務調査を中心とした依頼を安くお願いしたいのであれば、税務署OBが候補の一つとしてあげられます。その道20〜30年以上のベテランですから、税務調査の裏のウラまで知り抜いています。税務署OBは定年退官後の人達がほとんどなので、年金を受給していれば経済的にもさほど困ってもいないでしょうから、顧問料がそう高くなることもないはずです。会社なら法人税を、個人事業主なら所得税を、それぞれ課税部門として担当していた人を選ぶことが重要です。

 あなたには「かかりつけのお医者さん」がいますか?彼らは、常日頃からその患者と接しているため、持病の特徴や患者の体質などは無論のこと、その人の家庭環境から経済状態に至るまで全てを把握している人も少なくありません。自らが日々の診断や治療を担いつつも、高度の医療が必要とされるときには、大学病院等の高等医療機関の紹介もします。このような「かかりつけのお医者さん」のような存在であることを税理士に求める顧問先は、少なくないようです。

 税理士には税務関係の相談だけをお願いして、規模の大きい会社は、申告書の作成も含めてその他の会計税務処理はほぼ全てを自社で処理してしまいます。法務や労務については、それぞれの専門家である弁護士や社会保険労務士にお願いしているのが一般的です。

 税理士以外のそれぞれの専門家と個別に顧問契約ができるほどの金銭的な余力は、規模の小さい会社にはありません。そのため、税理士に対しては、会計や税務だけでなく経営全般にわたっての支援をお願いしたい、という希望が多いようです。近年はパソコン会計が発達し相対的に記帳業務の負担が下がった分、これまでのような単なる事務的なサポートだけでなく、事業計画の作成、資金繰り、投資や資産運用などのより高度な経営支援を求める顧問先が増えてきています。販売促進や宣伝広告などのマーケティング、就業規則や人事規定などの経営諸規定、役員会への出席など、求められる経営相談の内容も多岐にわたります。

 税理士に対し、このような、頼むと何でもよくやってくれるし本人もよく勉強している「かかりつけのお医者さん」的な存在であることを求めるのであれば、民間企業に勤めた経験のある税理士がよいかもしれません。会社組織を前提とした視点で適切なアドバイスが期待できるはずです。「会社」という生き物を肌感覚で理解できるようになるには、最低でも10年以上の会社勤務の経験が必要でしょう。できれば15〜20年くらいはほしいところです。生身の人間が集まり成り立っているのが会社組織というものです。税理士試験に合格しただけで、会社に勤務した経験のない人が書籍やセミナーで知識だけを補っても、肌感覚の血の通った経営アドバイスができるはずなどありません。

 税理士の大半は、学生時代から勉強だけをしてそのまま会計事務所に就職したか、税務署等を定年退官したか、そのいずれかです。人は自分が経験した範囲内でしか物事を語ることが出来ません。知らない世界のことについては、思いつきやイメージの域を出ることはないのです。生々しい問題に対処するためには、そのアドバイスの根拠となる会社勤務での様々な経験が欠かせません。しかし、一般民間企業にある程度の期間に渡って勤めた経験のある税理士はごく少数です。

 税理士の中には、長年の病院勤務での経験を活かし、医業に特化して専門のコンサルティングをしている人もいます。内部事情から、所轄官庁の情報、資金繰り対策、営業マーケティングなど、業界の裏のウラまで知り尽くした上でのアドバイスは、傾聴に値するでしょう。

 税理士が経営全般について支援するといっても、全ての問題を税理士一人の力だけで解決することはまず不可能です。大切なことは、トラブルのポイントを的確に把握し交通整理が出来るだけの偏りのない幅広い知識や経験がその税理士にあるのか、そして、必要に応じて、法律関係は弁護士、労務関係は社労士、登記は司法書士、許認可は行政書士と、それぞれの専門家と協力して適切に対応していけるのか、ということです。そのためには幅広い人脈が必要となりますが、優秀な税理士には自然と他の専門家が集まってくるものです。

 税理士といっても、全ての税法に精通しているわけがありません。医者の世界を考えてみれば明らかでしょう。内科や眼科、果ては心臓外科から遺伝子治療までと、全てをこなせる医者がいないのと同じです。顧問税理士が特に相続税を専門としていなくても、基本的なものであれば、その対応は可能でしょう。しかし、複雑で特殊な案件であれば、「相続税専門、しかも物納に特化している」といった税理士にお願いした方が、結局は、確実でしかも安いのです。顧問料を払っているからと、顧問税理士に全てをお願いしてしまうと、高くつく羽目になるかもしれません。
 
4 税理士はどうやってを探すの?

 税理士のタイプや事務所の違いを理解し、依頼したい事項も整理ができ、あなたにとっての最適な顧問税理士のイメージがかなり固まってきたのではないでしょうか?

 税理士をどうやって探し出せばよいのか次の課題です。顧問契約というサービスは、日用雑貨品のようにお店に行けばそこに商品が置いてあるわけではありません。また、家電製品のように性能や価格を単純比較することも不可能です。ここでは、その難しい税理士の探し方についてご案内します。

口コミ

 税理士とは、懐具合という大切なものを預け、長い付き合いになる存在です。しかし、その良し悪しは、事前にどれだけ調査してみても、結局はサービスを受けてみなければ分からないというのも事実です。

 税理士のサービスをすでに受けた人の評価が口コミなので、かなり参考になるといえるでしょう。「あの税理士は全然ダメ、あの税理士は少々顧問料が高いけどサービスは良い」といった評判は、大切な判断材料の一つになります。異業種の方の声を聞くことも出来ればより良いでしょう。町内会でも商店会でも話を聞ける機会はあるはずです。サービス内容や報酬、人柄などを事前によく聞いたうえで面談することをお勧めします。ただし、その社長も多くの税理士のサービスを受けたことがあるわけではないはずなので、様々な税理士を比較したうえでの客観的な意見というより、特定の税理士についての主観的なものとして考えましょう。

 税理士を知人に紹介してもらうという方法は、一旦紹介されてしまうとなかなか断りにくいのが難点であるといえます。たとえ紹介者にとっては最適な税理士であったとしても、自分にとっても最適であるかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。しかし、一旦紹介された後にお断りすると、紹介者の顔を潰してしまいます。話を聞いてみて、あまり魅力的に感じなければ、あえて紹介を受けないというのもひとつの選択肢でしょう。

 税理士が親戚・友人などにいれば、あなた自身がその人の人柄など相手のことをよく知っているので、よい関係を築くことができるのであれば、問題ありません。しかし、難しいのは、親戚や友人としての付き合いだけでは知り得なかったその人の一面が、いざ顧問契約という仕事を通じて接してみて初めて分かる、ということが少なくないことです。また、他人であれば気兼ねなく主張や要望も言い出せますが、親戚や友人であると、躊躇してしまいがちです。

 税理士が赤の他人であれば、顧問契約を解消してしまえばそれで済むことです。しかし、親戚や友人の場合は、仕事上のトラブルが、親戚や友人としての関係をも終わらせてしまう事になりかねません。このあたりのことをよく考慮して、お互いに相手との従前からの関係に甘えることなく、また期待しすぎることなく、ビジネスとプライベートの線引きを明確にして、適正な報酬を設定して取引することが大切です。

ホームページ

 税理士は古い体質の業界なのでホームページのない事務所も少なくありません。しかし、最近ではホームページを開設する税理士も増えつつあり、事務所紹介や業務案内に留まらず、サービスポリシーや個人の考え方などを掲載する税理士もいるので、税理士選びの参考になります。口コミの場合と違って、誰に気兼ねする必要もなく、多くの情報を集めて比較検討することが可能です。

 今の時代にホームページを開設していない税理士は、ITに弱かったり、メールでのやりとりが難しかったりするかもしれないので、こうした点を重視する場合は、選択肢から外すことになるでしょう。もちろんホームページの有無は、税理士としての仕事の力量に直接関係があるわけではないのですが、業務の効率性という観点からは、一考の余地があるかもしれません。

無料相談会

 税理士としての人柄を無料相談会やセミナー、講演会などで、そのやりとりから、把握することは可能です。これはと思う税理士へ個別に相談する機会があれば、色々と質問をしてみるとよいでしょう。

税理士会、青色申告会、法人会、など諸団体からの紹介

 税理士会・青色申告会・法人会・商工会議所などは、公式には税理士を紹介するサービスを行っていません。ちなみに、青色申告会は個人事業者を対象とした、法人会は会社を対象とした、青色申告制度の普及を目的とした所轄税務署単位の組織です。ただし、個別の問い合わせに対応して税理士を紹介するケースもあります。基本的には地理的な条件ということになるようですが、その団体の役員や相談員が紹介されることが多いようです。また、確定申告時期などに限定されますが、各団体が会場を設営して無料相談を行っています。個人事業の方であれば、その機会を利用して税理士を探すこともできるでしょう。

 税理士を紹介するサービスは、銀行も公式には行っていません。税理士の紹介をお願いすれば、その銀行の担当者が、個人的に知っている税理士が紹介されます。紹介される税理士は、その銀行の取引先の税理士や、その銀行で相続などのセミナーや相談会などをしている税理士であることが一般的です。銀行からの紹介は、税理士の数自体が少ない地方圏であれば有効かもしれませんが、都市圏であれば他の手段も試してみて、選択肢を広げるべきでしょう。

 税理士の紹介は、現在では、税務署もしていません。税務署は国の機関であり、民間人である税理士を紹介することは、本来するべきではなかったのです。税務署に紹介を依頼すれば、税理士会、青色申告会や法人会などで相談するように勧められます。

 税理士の紹介を各種団体等にお願いすると、その団体の基準で一方的に税理士が紹介されてしまうため、どのような税理士が紹介されるのか、全く見当がつきません。これが一番の問題点であるといえるでしょう。ただし、銀行の担当者からの紹介であれば、その税理士がどのような人物なのか、およそのことは教えてくれるでしょう。

税理士紹介会社

 税理士を探している企業に希望の条件に合う税理士を紹介するというサービスを手掛ける会社が最近増えつつあります。この税理士紹介会社は、インターネット広告やテレマ・DMなどを駆使して利用者と税理士を引き合わせることを仕事としています。サービス内容、年齢、報酬など、希望に合う税理士を紹介会社のネットワークから探し出し、仲人のような役割をしてくれる非常に便利な存在です。

 税理士紹介サービスの利用者側に負担はなく、税理士側が、成約時の成功報酬として紹介手数料を負担するというしくみが一般的であるため、税理士を探す手段としては手軽に利用できます。しかし、登録されている税理士に最初から候補者が限定されてしまうため、紹介された税理士が必ずしも適当であるとは限りません。

タウンページ

 税理士に広告規制が課されていた昔からタウンページはあるもので、特定エリアの税理士を手軽に探すことができる方法の一つです。また、ここから税理士の簡単な業務案内などを知ることも出来ますが、その税理士がどのような人物であるかを判断する情報はありません。

 税理士でも最近はタウンページに広告を掲載していない人も少なくないようです。これは、もっと費用対効果の大きい宣伝方法が多くなってきた今の時代、税理士の側でも、顧問先獲得の方法として、タウンページにあまり多くを期待しなくなってきているからです。このため、タウンページは、あくまで税理士一覧表の代わり程度として考えておいたほうが無難です。

結論は

 税理士に対して「めんどうな税務申告をなるべく安く済ませたい」というだけの要望であれば、様々な方法を駆使して出来るだけ多くの税理士にあたり、単純に料金面からのみで比較すればよいでしょう。余程ひどい税理士に当たらない限り、工夫を施すことなく単に期日までに税金計算をするだけなら、サービスにそれほど差はないはずです。

 「税理士を参謀役として企業の発展に活用しよう」「適正な手順を踏んで極力節税したい」と考えているのであれば、その税理士が「優秀でかつ信頼できる人物なのか」を見極めることが非常に重要となります。税理士は「人」そのものが商品です。そのため、税理士を探すにあたっては、まず、その方法が「その税理士がどのような人物であるかの詳しい情報が入手できる」ものであることが最も大切です。更に「ある程度の人数に絞った税理士を比較検討することが容易である」必要もあります。

 税理士を探すにあたって、1の口コミは、情報としては非常に有用ですが、一旦紹介を受けてしまうと断りづらく、比較検討が難しいのが短所です。2のホームページは、情報提供(単なる業務羅列や連絡先掲載だけでなく、必要とされる情報をきちんと提供しているものに限られますが・・・)という点において優れており、かつ、どれだけ比較検討を重ねても誰に気兼ねする必要もありません。しかし、税理士側からの一方的な情報提供であり、口コミと比較すると客観性に劣ります。この解決法として、口コミとホームページを併用すれば、互いの長所を融合し、短所を補い合うことが可能となります。

 その他36の方法は、単独では、情報提供や比較検討といった点で口コミやホームページより明らかに見劣りします。しかし、口コミやホームページとこれらを併用することにより、より良い税理士を探す手助けにはなります。36を使って候補者の間口を広げつつ、口コミとホームページによりその税理士についての情報を収集し比較検討していけば良いでしょう。

5 税理士との契約と顧問料

 税理士を選ぶあたって、これまでご案内してきた手順を踏んでようやく顧問をお願いしたい人が決まりました。残された課題は、顧問料を決めて契約をすることです。ここでは、その流れと考え方についてご案内します。

 税理士と契約するにあたって、まずは自社の経理能力を把握しましょう。家族経営の零細企業なら経理担当はご主人様か奥様になるでしょうか。以前勤めていた会社で経理を10年担当していた、という方であれば、日々の会計記帳と税務上の関連性も把握しているでしょうから、会計記帳は自社で担当し、税務申告書の作成だけを依頼するという選択も可能です。しかし、経理の素養が全くないのであれば、会計記帳は税理士に依頼した方がよいでしょう。

 税理士に依頼する業務範囲が、自社の経理能力の把握が終了すると、明確になります。税務については、法人税だけなのか住民税などの地方税も含むのか、源泉徴収所得税や消費税はどうするのか、償却資産税は、といったところを税理士と確認する必要があります。これらは全て相互に関連性があるものなので、特段の理由がなければ、税理士に依頼することをお勧めします。その他、資金繰り、経営計画作成や決算分析、タックスプランニングなどのコンサルティングが含まれているのかいないのか、確認して下さい。

 税理士に依頼する業務範囲が明確になれば、次は顧問料です。なるべく安く済ませたいところでしょうが、税理士の側にも採算ラインがあり、仕事に対する適正な対価は要求します。安さばかりを追求して、このラインを踏み込んでまで安くしようとすると、依頼そのものを断られるか、そうでなければ、それなりの仕事しか期待できません。契約形態は、月額固定の顧問料が一般的ですが、相談の都度に個別料金を請求するといったものもあります。

 税理士会が定めていた報酬規定は、平成14年度の税理士法改正で廃止されました。この報酬規定とは、税理士が提供する各種サービスに対する最高限度額を定めていたもので、現実は、この70〜80%の金額が一般的だったようです。企業規模、税務処理上の煩雑さや記帳代行業務の有無などにより多少前後しますが、顧問先の殆どを占める資本金が1000万円以下の法人の場合、月額顧問料3-5万円、決算料20-30万円、といったところが、最頻値としての金額のようです。「税理士顧問料 東京税理士会」で検索すると、東京税理士会がアンケート調査した税理士顧問料の相場が掲示されているので、参考にするとよいでしょう。

6 無料相談

 「税理士への報酬を払わずに済むのなら、それにこしたことはない」というのは、誰もが抱く素直な気持ちなのでしょう。特に税理士を単に「税金の計算屋」と捉えている人達に多い考え方でもあります。そこで、各種の無料相談会に足を運ぶのですが、「タダより高いものはない」ということにならないように注意する必要があります。

 税理士をはじめとした対応する側も決していい加減にやっている訳ではないのですが、無料相談は時間的制約が強く、様々な資料に目を通し、日々の取引も充分に把握した上で判断することは、まず不可能です。出来るアドバイスにも自ずと限界があるというものです。

 無料相談は、あくまで自主申告を支援することが目的なので、あれこれ節税対策を相談しても、満足できる回答は得られません。そもそも有効な節税対策は、その会社の特徴や実態を常日頃から把握しているからこそ、可能となるものです。対象となる金額が大きいのであれば、有料で顧問契約をし税務相談を受けたほうが、結局は安く済むでしょう。税務申告をタダで済まそうとするあまり、反対に多くの税金を納めてしまう羽目にもなりかねないわけです。日本では、相談業務に対してお金を払うという考え方が希薄ですが、コンサルティングのような形のないの商品ほど「安物買いの銭失い」にならないようにしなければなりません。

 また、銀行などの無料相談は、彼らの本業に寄与するという視点に偏ったアドバイスになりがちなので、あくまで参考程度に留めておき、利害関係のない第三者の意見を必ず聞いておくことが肝要です。バブル期の過度な節税対策が多くの人を悲惨な人生に陥れたことを忘れてはいけません。

 無料相談は以上の点に注意し、必要に応じて有効に活用してください。以下に無料相談の主なものを挙げておきます。

税務署

 税務署での相談は、対応に出た職員のレベルや専門分野によって大きな差が出てきます。また、管轄地域に法人が多いのか個人事業者が多いのかによっても異なってくるものです。こうした特徴を捉えた上で相談することが大切となります。また、節税に関するアドバイスは受けられないので注意が必要です。

自治体

 税理士が各税理士会から派遣されて対応するのが一般的で、県や市などが発行している案内で、開催日時などが確認できます。税務署では受けることができない節税のアドバイスなども相談できます。しかし、時間は30分程度と短いので、込み入った相談は難しいでしょう。

青色申告会

 青色申告会は青色申告の普及を目的として作られた社団法人で、大都市ではほぼ各市区に設置されています。小規模事業者であることが会員資格であり、青色申告に関する質問のみを受け付けています。

法人会

 財務省認可の公益法人で税務署との結びつきが強く、税務講習や相談会などを開催しています。会員であれば無料です。誤解されている方が多いのですが、法人会は、税務上のトラブルが発生したときに税務署との仲介をして問題解決をしてくれるわけではありません。

商工会

 事業者向けを前提としている無料相談で、相談内容も法人税や事業税が中心となります。

インターネット

 税理士がホームページでメールを使い無料相談をしているケースがあります。税理士としては、一種の「試供品」としての位置付けなのでしょう。これをきっかけに顧問契約等の仕事に結びつけば、といった考え方からしていることなので、利用条件(地域、事業主限定など)を付けている場合もあり、確認が必要です。

7 税理士が嫌がるお客さんって?

 税理士は、あなたの大切なパートナーです。できるだけ良好な関係を築きたいものです。税理士も人の子なので、顧問先との関係がうまくいかないと、良い仕事は出来ません。以下は嫌がられるタイプのお客さんなので、参考にしてください。

脱税を要求する

 税理士は節税のアドバイスはしますが、脱税のサポートは一切しません。脱税のやり方を指導したり、税務署に口を利いたり、ということが税理士の仕事だと勘違いされている方もいますが、それはまったくの誤解です。脱税の指導が発覚すれば税理士資格を剥奪されます。脱税をすると目先得した気分になるようですが、信用面は言うに及ばず金銭的にも結局は割に合わないものであることは、改めて説明するまでもないでしょう。脱税に知恵を働かせる暇があれば、どうすれば売上を伸ばすことが出来るのかを考えた方が賢明です。

とにかく値切る

 税理士業務には、事務所賃料や人件費、交通費、通信費、その他の経費がかかります。必要時間などから算出した適正報酬がありますし、相場もあります。負担能力、満足度、顧客価値などに関係なく、とにかく執拗に値切ってくる方を散見します。税理士との間には、信頼に基づくビジネスパートナーとしての関係を築くことが理想です。値切ったもの勝ちといわんばかりの過度な値切りは、税理士との間の信頼関係を喪失しますし、場合によっては依頼そのものを断られてしまうこともあるでしょう。

なんでも自前でやりたがる

「税理士側の負担を軽くするかわり、その分、税理士報酬も減額したい」という主旨で「会計記帳は頑張ってやれるところまではやるので、間違いがないかを確認してください」という方が散見されます。「会計記帳分だけ安くしてほしい」というご希望なのでしょう。前述の「とにかく値切る」とは違うので、一概に否定するものではありませんが、この「税理士側の負担を軽くする」というのがポイントになります。

 税理士との契約が「会計記帳は自分でするので、申告書の作成だけをお願いします」というものであれば、正しく会計記帳がされていることが前提になるので、税理士側では会計記帳に間違いがないかは確認せず、税務申告書を作成することになります。

しかし、会計記帳は税務申告のためにするものなので、単に簿記2級や3級を取得しているから仕訳がきれる、というだけでなく、ある程度の税務知識もなければ、税務申告を前提にした会計記帳をすることはできません。20-30分ほど説明して、おこずかい帳をつけるようにはいかないのです。

 ましてや経理の経験がない方から「あれは、これは」と質問攻めにされると、税理士側で会計記帳を最初から全て担当する方が、よほど負担が軽く、しかも正確で早い、というのが正直なところです。

また、こちらが想像もできないような処理がされていて、そのことに対して「先生がそのように説明した」と苦情があがることも少なくありません。そのような主旨の説明をするはずがないので、原因としては「説明が理解されていなかった」又は「説明がうまくできていなかった」ということになります。

 説明が正確に理解されているかに神経を使い、また、説明が理解されているか否かを確認するには、結局、税理士側で全てを再確認せざるを得ないのですが、着手されてしまった会計帳簿からどこかにあるであろう間違いを探し出すのは、かなり骨の折れる仕事です。

 税理士側の負担は顧問先ではわからないので「できないながらも、努力してこんなに頑張ったのだから、そこそこ税理士側も負担が軽減されているはず」という大きな認識のずれが生じる傾向にあり、このような状況に陥るとお互いにストレスがかかってしまいます。

 また、税務申告といっても、法人税だけななく、住民税などの地方税、源泉徴収所得税や消費税、この他に償却資産税など様々なものがあります。「この申告書とこの申告書はこちらで作成するので、申告書に記入する数値を教えてください」という申し出もあります。税理士側の負担を軽くするかわり、その分、税理士報酬も減額したい、という主旨は、前述した会計帳簿と同じ考え方です。

 しかし、記入する数値を算出する過程がポイントなのであって、算出された数値を申告書に記入すること自体は、特段に大変なことではありません。また、これらは基本的に相互に関連性があるものなので、申告書を個別に切り離されても、税理士側の負担が単純に軽減するわけではないのです。

 経理の知識を高めたい、という方に経理や税務についてご説明するのはやぶさかではありませんが、たとえ一部であっても実際の実務を担うことはそれほど簡単ではない、ということをご理解頂きたいのは、税理士共通の想いでしょう。

いつも急がせる

 緊急性がある仕事は止むを得ませんが、どんな仕事でも「至急」「今日中に」というオーダーをされる方がいます。税理士は複数の顧問先に対してサービスを提供しています。自社の従業員のように1社専属ではありません。急ぐ場合は、急ぎとなる理由をきちんと説明したうえで依頼すべきでしょうし、当然、割増料金も発生します。何でもかんでも「至急」というのは考えものでしょう。

事務屋あつかいをする

 税理士に顧問料を払うのだからと、会計や税務の専門的なこと以外の総務一般事務的なことまでやらせようとする方を散見します。しかし、税理士の側にも採算ラインがあり、顧問料が月額固定料金制であれば何でも引受けることは出来ません。もちろん依頼内容が増えれば、それに応じた報酬を別途に頂くことになります。どこまでお願いするのかを事前に取り決めておくべきでしょう。

 税理士は、会計や税金、経営などに関するアドバイザーとして活用し、自分で出来ることはなるべく自分で処理して、専門的なものに限ってお願いするのが、税理士をうまく使うコツであるといえます。また、領収書整理や現金出納帳作成などを一定の期日までに会社側で終わらせておく約束を税理士としているのであれば、指定の日までに終わらせておくことは云うまでもありません。

おわりに

 税理士とはそもそもどのような人達なのか、事務所によってどのような違いがあるのか、といったところからご案内を始めました。しかし、税理士や事務所を選ぶに先立ってまず最初にしなければならないことは、あなたが税理士に何を依頼したいのかを整理することです。「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と孫子の兵法でも説いていますね。

 税理士や事務所のイメージがこれらの過程を経てようやく出来上がります。さて、次に問題となるのが「これをどうやって探し出すのか」ということです。この方法についても出来るだけ詳細にご案内しました。そして、数人に絞り込んだ候補者の中から顧問税理士をお願いしたい人物を決定します。その人物と合意に至れば、顧問料を決めて、めでたく契約書の調印の運びとなります。

 税理士選びのこれら一連の流れのほかに、ご参考までにということで、無料相談の役割と顧問税理士との付合い方についても触れておきました。

 税理士をここでは、単なる税金の計算屋としてではなく、会社発展のための参謀役として活用することを前提として、ご案内してきたのですが、当然、これと違った考え方の方もいらっしゃるでしょう。しかし、中小零細企業にとって、税理士の存在は、非常に大きいものです。会社のお金の流れを全て把握している税理士を活用しない手はありません。

 税理士の力量を、そのためには見極める必要があります。単に会計や税務の知識や経験が豊富というだけではなく、販売促進や労務問題の相談は出来るのか、どのような社会経験を積んでいるのか、あなたが持つ価値観や人生観といったものを共有できるのか、といったことを十分に時間をかけて吟味しなければなりません。その様な税理士でなければ、経営のパートナーとしての活躍は期待できないでしょう。

 税理士も人間ですから完璧な人などいるわけがありません。ですから、もし顧問税理士に対して不満があったら、早めにその税理士と話をするべきです。そのときの対応の仕方で、税理士の資質が分かることもあるでしょう。しかし、そのためには、あなたも税理士の仕事の内容を再確認して、税理士に何を期待したいのか、明確にしておかなければなりません。

 経営者は孤独で、人には打ち明けられない悩みを少なからず持っているものです。そのため、経営者は気軽に相談できて、その際に「大丈夫です」と後押ししてもらえることを税理士に期待しているのかもしれません。ひと言でいえば「安心感」ということになるのでしょうか。顧問料のうち幾らかは、この安心感を得るための対価なのかもしれません。そう考えると、税理士と顧問先の関係で何よりも大切なことは、長いお付合いをすることです。税理士も時間をかけて顧問先をお手伝いしなければ、経営者が何を心配しているのかはすぐには分かりませんし、それに対して的確なアドバイスをすることもできません。税理士と顧問先の信頼関係は、時間をかけて醸成されてくるものです。

 税理士に不満を感じてもすぐに税理士を代えたりせず、その税理士に何か課題を出してみてはどうでしょうか。それに対する姿勢をみて、また仕事の内容を見直したりして、それでもなおその税理士と付き合っていくことが難しいようであれば、新たな税理士を探せばよいのです。

 努力の甲斐もなく、一向に改善の気配がうかがえない場合には、契約を解除せざるを得ないでしょう。税理士には守秘義務があるので「内部事情をばらされるのでは」と恐れる必要はありませんが、やはり別れ方は大切です。トラブルがあった場合に、これを口実に契約を打ち切るやり方もありますが、喧嘩別れだけは極力避けたいものです。税理士も人の子、無用なトラブルを避けるためにも、くれぐれもそのプライドを傷つけないようにする配慮が必要です。

 税理士に親戚がなったのでそちらにお願いします、学生時代の友人が独立したので・・・など、相手の顔を潰さないようにする姿勢が大切なのです。プライドのある税理士であれば、その辺りの気配は汲み取ってくれるはずです。どうしてもこじれるようであれば、3か月分の顧問料などの手切れ金を渡すのも一つの方法かもしれません。

 税理士の理想像は、顧問先のニーズよってまったく異なるものですし、実際理想にぴったりの税理士にはなかなか出会えません。ですから、問題なく長いお付合いができ、心配事の相談に親身になってくれる税理士であれば、あなたにとってその顧問料は妥当ということになるでしょうか。また、その判断ができるのは、あなただけなのです。

 税理士選びにこれまでのご案内がお役に立てが幸いです。あなたの事業成功の一助になれば幸いです。




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