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脱税の裏のウラ その闇の世界の実態を暴露



脱税の裏のウラ


その闇の世界の実態を暴露


 「脱税」。怪しげでいて、魅惑的な響きを持つこの犯罪に対する一般的なイメージはどのようなものでしょうか。脱税は経済犯罪ということもあって、知能犯が巧妙かつ狡猾に知恵を振り絞って実行する、頭の良いヤツがする犯罪、というイメージを持たれる傾向にあります。しかし、本当に頭の良いヤツは、脱税がいかに割に合わないものであるかを熟知しているので、節税に知恵を絞ることはあっても、脱税に手を染めるような愚かなことは絶対にしません。

 これから脱税についてご案内しますが、これはあくまで「反面教師」の位置づけとしてご案内するのであって、「うまくやれば、脱税くらい、この俺でもできるかも」というトンデモない勘違いをしないように警告しておきます。少なくても、ここに記載してある程度のものであれば、お話になりません。

 これは、単に道徳的な話をしているわけではなく、あなたレベルの実力で、脱税という非常にハードルの高い犯罪をやり遂げられるはずがないからです。

 「脱税は殺人よりも難しい」と云われることがあります。その理由は、脱税とは、自らが開業届という容疑者宣言をしたうえで、確定申告書という主要な証拠を当局に提出して実行しなければならない、困難を極める犯罪だからです。これに対し、殺人は、容疑者宣言をする必要は全くなく、証拠隠滅もやり放題です。そもそも、死体があがらなければ、「殺人があった」という事実そのものが露見することもありません。

1.脱税の手口は多種多彩?


 脱税といえば、真っ先に思い浮かべるのは、宮本信子主演の「マルサの女」でしょうか。「うんと儲かっているのに、これをごまかして税金を支払わない脱税会社に踏み込んで、悪徳社長をこらしめる」という勧善懲悪の映画なのですが、それまで、あまり世間に知られることのなかった税務調査の実態を赤裸々に描写し、世間をあっと驚かせました。

 当初、制作サイド側では、当局の協力は期待していなかったようです。しかし、実際は「どうせ、作るな!と言っても作ってしまうだろうから、それなら納税者に誤解を与えない様に正確な内容にして欲しい」ということで、取材に協力的であったようです。実際、査察やガサ入れのシーンでは、マルサOBが監修に協力しました。

 さて、脱税する税金にも色々な種類があるのですが、やはり、この映画で取り扱った、法人税がもっともイメージしやすいでしょう。利益に対して課税する法人税を脱税するためには、利益を実際よりも少なくみせかけなければなりません。そのために脱税者が駆使する悪知恵にも様々なものがあるのですが、これらは、つまるところ、

・売上を少なく申告する
・費用を多く申告する

のいずれか2つに集約されます。脱税とは多種多彩なものだと考えていた方からは「えっ、たったの2つしかないの?」という驚きの声が聞こえてきそうですが、これが脱税の限界であり、宿命でもあるのです。

 税金を減らす為には、「売上を過少に申告するか」「費用を過大に申告するか」という2通りしかないのですが、反面調査が容易な売上調整よりも、取引が多岐にわたる経費調整の方が煩雑だろうと考えられているようで、一般的に、脱税でよく使われるのは費用の水増しです。

 しかし、売上調整における税務調査のポイントは、「どれだけの数に及ぶ売上先があるのか、これを把握しなければならない」のですが、その数を完全に把握するのは容易ではありません。不特定多数に対して販売しているのであれば、何をもって「これで全てだ!」とするのか、その確証を得る事ができないからです。

 一方、「費用を多く申告する」という費用調整は、提出されている費用について、その帳簿や領収書等の証憑を調査すればよいので、対象がどれだけあるのかが確定しない売上調整と違って、対象が最初から確定されています。

 売上の税務調査は「宝探し」、費用の税務調査は「知恵の輪クイズ」、と云えるかもしれません。

2.売上の除外による脱税


 脱税について、それでは、まず「売上を少なく申告する」からご案内することとしましょう。

 「売上を少なく申告する」といっても、5000万円であった売上を単純に1000万円少なく4000万円と記載して申告するようなおめでたい脱税者はいません。実際より1000万円少ない4000万円が、あたかも本当であるかのようにみせかけるための工夫を必ずしているものです。 

1.特定日や特定の時間

 古典的なものとしては、除外する売上を特定日や特定時間だけに限定する、というものがあります。飲食店であれば、年中無休なのに水曜日は定休日であることにして、その曜日の売上を申告しないとか、午後10時が閉店なのに、午後8時が閉店であることにして、最後の2時間分の売上を申告しない、といったものです。

 除外する売上は、売上が多い時間や曜日のものにする傾向があるようです。「平準化しておけば、あまり目立たないだろう」という発想なのでしょうか。調査官の側でもこの傾向は把握しているので、逆に、売上の多い時間や曜日については、重点的に調査します。

 これらは、単純に売上を過少申告しているわけではなく、一応つじつまが合うように脱税者としては努力をしているつもりなのですが、これで騙せてしまえるほど税務署のレベルは低くありません。税務調査をするにあたっては、当然、定休日や営業時間などの基礎的事項は把握していますし、この程度であれば、少し調査するとウソはすぐにばれてしまいます。

2.レジ

 レジには売上の全てが集約されているので、税務調査では、信憑性の最も高い証憑として取り扱われます。これを逆手にとって、レジを細工して脱税を図ろうとする人が後を絶ちません。代表的なものとしては、

・特定の商品のみをレジを通さず電卓で対応
・特定の時間についてはレジを通さず電卓で対応
・一日分のレジを打ち直して除外(商品販売数の少ない業態)
・複数あるレジのうち一部をレジごと除外

といったところがありますが、単純にレジシートの一部を切り取って除外すると、「切れ端と切れ端の形があわない」といった不具合が生じるので、全てに整合性を取ろうとすると、なかなか大変な作業になります。

3.伝票を捨てる

 伝票は最も原始的な記録なので、これを廃棄されてしまうと、その後の税務調査に支障をきたします。よって、連番を確認するなど、伝票の廃棄がないかを調査しますが、廃棄する側でも、「単純に事業所のごみ箱に捨てたりすると、直ぐにばれてしまうのでは」という程度の認識はあるようで、自宅や全く別の場所で廃棄するなど、それなりに工夫していることが多いようです。

4.毎日少しずつ

 これも古典的なものの一つになりますが、「毎日少しずつ売上を除外する」というものがあります。除外する金額は、一日あたり5000円とか1万円とか少額なのですが、これも毎日となると、年間ではそこそこの金額になります。 

 あまり目立たないようでもあり、うまくいきそうなのですが、あまりに少額だと脱税の効果がほとんどありません。では、その効果を狙ってその金額を引き上げると、どうなるのでしょうか。多少引き上げたとしても、毎日に振り分けていれば「この店の売上はこんなもんだ」ということで、ばれずにすむのでしょうか。

 飲食店などの場合、調査員は客を装って来店し、自分の伝票に印をつけ、後日、税務調査の際にこの印をつけた伝票が売上に計上されているかを確認をします。この伝票分が売上として計上されていなければ、脱税の疑いが濃厚ということになるのですが、売上に計上しない伝票の数を増やして、脱税の金額を引き上げようとすると、この罠に引っかかる確率が高くなります。

 また、たまたま2名の客が続いて同じ代金を支払う場合、売上を除外する者の心理としては、後で支払う客の売上を除外する傾向があるようです。2名の調査官が客に扮して同様の支払いをして、不正を暴くこともあります。

5.一見客の売上は除外しない

 上記4の脱税方法では、ロシアンルーレットのように「当たるか外れるかはその時の運任せ」ということになります。しかし、脱税者の側でも少しは知恵を働かせているようで、何も考えないで無作為に売上を除外しているのかというと、そうではありません。「調査員が客を装って来店することがある」という調査手法を認識していて、調査員の事前調査を警戒し、常連客の売上のみを除外して、一見客の売上は除外しないといった対策を講じているようです。

 「公務員だといっていた常連客が、実は税務署の職員だった」という笑えない笑い話でもないかぎり、こうすれば、上記の手法による事前調査で売上除外を暴かれることを防止できるかもしれません。

6.特殊な決済

 一般的に、「通常の取引先以外の取引はばれないだろう」と考えられる傾向があるようで、遠隔地や単発の取引を除外する脱税も少なくありません。

 遠隔地での取引を除外する脱税は、特に日頃は近隣での取引しかしていない事業者に散見されます。しかし、国税庁は、全国の取引状況について情報を集め、それぞれの税務署と情報共有しているため、うまく誤魔化したつもりでも、すぐにばれてしまいます。また、一度だけの取引とはいえ、前述したように、税務署は年中あらゆる取引について情報を集めており、その回数が違っても発覚する可能性は変わりません。 

 卸売業を営む会社は、通常、特定の得意先と掛にて取引をするものですが、一部の商品については消費者にも直接発送していることがあります。この場合、掛けによる取引のみを売上として計上し、消費者直販の売上については社長個人名義の預金口座に代金を振り込ませるなどして、故意に売上を除外して脱税していることがあります。

 社長はうまく誤魔化しているつもりでも、税務調査において、商品を発送した際の運送会社からの請求書が発見されてしまう、といったことなどにより不正が発覚するので、悪い事は出来ないものです。

7.経費の過少計上で脱税?

 「本来であれば、経費に計上すべき領収書などが税務調査で発見され、これをきっかけとして、脱税が発覚することがある」と説明されると、にわかには理解できない人も多いのではないでしょうか。「経費計上が漏れていた」というのは、「管理が杜撰」という経理統制上の問題はあるものの、税務調査の観点からは、利益の過大計上であり、何ら問題はなさそうです。しかし、調査官の視点は一般人とは異なります。

 これまでご紹介してきたものは、すべて売上を「除外する」という脱税行為です。売上にはそれに対応する仕入があるものが多く、売上と仕入のバランスが取れていないと、脱税が簡単にばれてしまいます。また、売上だけを単純に抜いてしまうと、利益率が極端に悪くなり、ここからも脱税が発覚します。

 そこで、知恵のある人は、売上を除外するとともに、除外した分の売上に対応する「仕入」も除外してしまいます。たとえば、洋品店の経営者が、毎日の売上から数十着分の売上を除外している場合、税務調査で、服の仕入数と売上数を付き合わせると、仕入の数の方が脱税した数だけ多くなってしまいます。

 この仕入の余った分について、どこにいったのかを追及されれば、簡単に脱税が発覚してしまう、というわけです。ところが、除外した売上分だけ、仕入れた服の数も減らして帳簿を付けていると、調査官が仕入の数から売上を調査しても、そこからは脱税は発覚しない、というわけです。

 なかなか手の込んだ知能犯のワザ、という印象を持ちますが、この「両抜き」には、大きな問題があります。それは、売上除外で利益を減らすとともに、仕入除外で経費も減ってしまうので、その結果、脱税できる金額も少なくなってしまうのです。たとえば、服1着が5万円でその仕入が3万円だとしたら、1着の売上を除外すれば5万円分の利益を脱税できますが、仕入も除外してしまうと、差引き2万円の利益しか脱税できません。

 また、売上と仕入との両方に渡って帳簿を改ざんするため、「不正経理をしている範囲が広くなりボロが出やすい」「処理が複雑になるので辻褄が合いにくくなる」といったマイナスもあり、不正経理が発覚する可能性が高くなります。完璧を期すために色々と手間隙かけて工作を図るのですが、「労多くして功少なし」ということになってしまうわけです。

 この脱税方法は、調査官が客として商品を買い、その商品がきちんと売上に計上されているかを調べることでも見破られます。また、仕入先を反面調査して、納品数と帳簿上の仕入数を付き合わせることによっても発覚します。

8.店舗まるごと

 両抜きの最大の問題は、「脱税金額が少なくなる」ということでした。しかし、もっと大胆な方法であれば、この問題を解決することが可能になるかもしれません。

 複数の店舗を有していれば、そのうち1店舗の売上と仕入の両方をそっくりそのまま除外して法人税の申告を行うのです。この方法であれば、ある程度まとまった利益を減少させることが可能で、かつ、売上を除外すると粗利益率が減少して脱税が発覚してしまうリスクもなく、一挙両得、ということになります。

 ちなみに、当該店舗で一時的に荒稼ぎをした後、この店舗を事業年度末日までに計画的に閉鎖して、発覚を防ぐ念を入れましたが、税務調査で、本社のメモに除外した店舗の電話番号が記載してあったことが端緒となり、不正が発覚した、という事例があります。悪い事は出来ないものですね。

9.売上の繰延

 事業年度が月末に終了する場合は、請求の締め日が20日だとすると、21日から月末までの出荷に対する売上高をその事業年度の売上高に算入する必要があります。請求書は20日締めで発行されるので、21日以降の売上高は納品書等から把握しなければなりません。この作業を失念すると、締め後の売上高について売上除外となってしまい、税務調査でよく指摘を受けるケースになります。しかし、故意でない限りこれに対して重加算税が課されることはなく、一定の要件を満たすと、来期の売上とすることも可能です。

 しかし、確信犯として、「納品書の日付を書き換える」といった改ざんをすると、話は変わってきます。期末の売上と費用については、税務調査では重点調査項目でもあり、そもそも調査官はその道のプロですから、素人が浅知恵で下手な工作をして誤魔化せるほど甘くはないのです。


3.経費の架空計上による脱税


 脱税について、まずは、売上調整による脱税の手口をみてきましたが、ここからは、脱税のもう一方の手口である、経費調整による脱税をご紹介していきます。経費調整は、「取引が多岐にわたるので煩雑だろう」と考えられる傾向にあり、一般的に、脱税でよく使われるのは費用の水増しの方です。

1.領収書の工作

 経費をごまかす脱税で昔からある代表的なものとしては、「領収証を工作して経費を水増し、利益を減少させる」という方法があります。領収証は、その取引があったかどうかを判断する証拠として取り扱われます。そして、領収証があれば、帳簿上はその金額を経費として処理できるため、偽の領収証を使って脱税する手口があとを絶ちません。

 領収証の工作方法には「改ざん」と「偽造」の2つがあります。

 改ざんでは、白紙の領収証に適当な金額を書き込むか、あるいは、領収証の数字を書き換えて水増しをします。たとえば、「1」を「9」に、「3」を「8」に書き換えたり、桁数を増やしたりする、といった具合です。

 しかし、現在では白紙領収書を入手できるところはほとんどありません。また、改ざんするにしても、「数字を書き換える」といった幼稚園レベルのことをするおめでたい人はまずいないでしょう。領収証をパラパラと見れば不自然なことは素人でも気付きますし、領収証の発行元に反面調査をして記載内容の確認をすれば、すぐにばれてしまいます。

 一方、偽造は、改ざんと比較すると「少しはまし」ということになるでしょうか。しかし、市販されている領収証を買ってきて、架空の業者などの領収証を作るといった単純な手口では、改ざんとレベルは同じになります。

 偽造も本格的にするのであれば、「偽の領収証を闇業者から買う」という方法があります。この場合だと、一般的には幽霊会社や倒産した会社名義の領収書になるので、税務署も調べかねて証拠を固めるのが難しく、黒と証明できないこともあるようです。しかし、調査官もプロですから、どれだけ体裁だけは整えても、これまで取引のなかった会社が唐突に現れたり、全体の概要から判断して、これが明らかに不自然な領収書であることくらいは、すぐに分かります。

 そうなると、「明らかに脱税に手を染めている」という心証をもたれることになり、その税務調査は徹底的に実施されることになるでしょう。そして、税務署のブラックリストにも載せられることにもなり、毎年のように税務調査を受ける羽目に陥ることになります。

 運よくその領収書が偽物であると税務署が証明できなかったとしても、その代償は計り知れないくらい大きなものになることは、間違いありません。また、税務署は、日頃から偽の領収証を販売している業者の検挙に全力をあげていて、その業者が捕まれば、業者から領収証を買っていた人は一網打尽となります。

 ニセの領収書を販売している闇業者には、B勘屋とかぶり屋があります。

 B勘屋とは、経費の水増しに必要な領収書を販売する、脱税請負業者のことです。倒産した企業などから領収書を買い取り、税金を減らしたい経営者に販売しています。「倒産済の企業なら既にこの世に存在しないため、税務署も税務調査のしようがなく、足が付きにくい」という理屈のようです。つまり、事実上「架空の」領収書の販売を仲介するのがB勘屋であり、言わば「脱税指南役」というわけです。

 B勘屋をもっと極端にしたのが「かぶり屋」と呼ばれる業者です。かぶり屋とは、自分で架空の領収書を発行してそれを販売し、自らが倒産や夜逃げをした形を取ることで、領収書の真偽を分からなくするのです。かぶり屋は文字通り、脱税の罪をかぶったまま雲隠れする存在なのです。

 B勘屋の領収書は額面金額の5%程度が相場のようです。かぶり屋だと業者のリスクが高くなることもあり、もう少し高い手数料を取られるようです。節税と脱税の境界線は明確ではなく、見解次第でどうにでも解釈できる「グレーゾーン」が存在します。グレーゾーンの経費を如何に正式な経費として税務署に認めさせることができるかが節税のポイントであり、腕の見せどころでもあります。しかし、B勘屋やかぶり屋は、実際に取引のない領収書をでっち上げる訳ですから、まぎれもない脱税行為であって、グレーではなく完全に「真っ黒」です。

 しかも、B勘屋やかぶり屋には、裏の世界の人間が深く関わっています。B勘屋やかぶり屋を利用すれば、彼らに半永久的に脱税という弱みを握られることになり、その後、どの様なゆすり・たかりを受けるのか、容易に想像がつくでしょう。最終的には脱税額よりも遥かに高くつくことになるのは間違いありません。

2.架空人件費

 領収証の工作と並んで経費を水増しする代表的な手口として、架空人件費の計上があります。この世に存在しない全く架空の人物を仕立て上げて雇っているように見せかけたり、実在はするものの本当は雇っていない人を雇っているように見せかけたり、といった具合に、人件費を実際よりも多く払ったように偽装する方法です。

 現在では、従業員を雇った場合、従業員の住所、氏名、給与額等を役所に提出する義務があります。よって、架空の人物を雇ったようにしても、税務署がその人物の所在などを確認すれば直ぐにばれてしまいます。

 また、人件費の水増しをしても、社会保険の面などから調査すれば、簡単に虚偽は判明します。中には架空給与における社会保険料や源泉徴収税額を敢えて支払って、表面上つじつまを合わせて完璧を期そうとする人もいますが、これも調査すればすぐに発覚するだけで、賢明な方法とは云えません。

 調査官が頭を悩ませる手口としては、アルバイトなど、社会保険の加入義務がない人を雇ったように見せかけて脱税する方法です。住所や氏名等を役所に提出する必要がない給与レベルであれば、その人物を特定することが難しくなります。また、家族経営の小さな会社では、学生である自分の子供をアルバイトで雇ったことにして、その分の人件費を偽装する例もあります。本当にその人が働いていたかどうかを確認するには、他の従業員や関係者に聞き取り調査などをするしか手がなく、身内だけの完全な家族経営の会社であれば、その確認はほぼ不可能になります。

 扶養控除の範囲であるなど給与金額が小さければ、調査官もあまり問題にしないかもしれません。しかし、うまくやっているつもりでも、脇が甘くなって金額を大きくすると、どこかでボロがでてきてしまい、痛いしっぺ返しを受けることになるでしょう。

3.外注費

 想定外の利益を計上してしまった場合、あわてて架空会社や幽霊会社への外注費をでっちあげて、墓穴を掘る人が後を絶ちません。まとまった金額を最も簡単に捻出する方法として安易に飛びついてしまうのでしょうが、金額が大きくなりがちなので目に留まりやすく、かつ、相手先を調査すれば簡単にばれてしまいます。

 また、取引先と結託して架空又は過剰の外注費を計上し、取引先からバックリベートを取得している場合もあります。取引先にも協力金として幾らか支払うので、両者はWIN-WINの関係になります。会社ぐるみでの組織的脱税ではなく、担当者レベルで私腹を肥やしていることもあるようです。

4.仕入

 想定外の利益を計上した場合、外注費と並んで架空経費としてよく使われるものに、仕入があります。架空会社や幽霊会社からの仕入をでっちあげるのですが、仕入だけを架空計上しても、売上と仕入のバランスが崩れてしまい、そこから脱税が発覚します。

 また、外注費と同様に、取引先と結託して架空又は過剰の仕入を計上し、取引先からバックリベートを取得している場合があります。取引先にも協力金として幾らか支払うので両者がWIN-WINの関係になるのも、会社ぐるみでの組織的脱税ではなく担当者レベルで私腹を肥やしていることがあるのも、外注費と同様です。

 ただ、仕入先については、取引先の数がある程度に限定されているものなので、調査官が不審を抱き相手先を調査すれば、仕入による脱税は比較的簡単に発覚します。

 仕入れた商品をそのまま横流して脱税を図る場合もありますが、これは、仕入による脱税というよりも、売上を除外する方法になります。このままであれば仕入だけが過剰になり、売上とのバランスが崩れてしまって、これを端緒として脱税が発覚するのですが、返品不可が商慣行の業界だと、帳簿上は廃棄商品として取り扱っておけば、売上と仕入のバランスが崩れることはありません。

5.旅費

 旅費については、出張先などの場所が会社から離れていて、かつ、証憑も多岐にわたるので、脱税が発覚しにくいのでは、と一般的には考えられてしまう傾向があるようです。しかし、出張は、一つ一つの事実確認を積み重ねていくと、細部の辻褄が合わなくなってくるので、税務調査としては比較的容易に発覚できる部類のものになります。

 単に航空券や宿泊費といった領収書を揃えておき、日程表を作成さえしておけばよいと考えるのは浅はかです。また、領収書を揃えるために購入した航空券などは通常売却して換金化しますが、これが端緒になって脱税が発覚することもあります。

6.経費の前倒し

 前述した売上の繰延とは反対に、翌期以降の経費を今期に前倒して経費を過剰計上して脱税する方法です。今期に前倒した経費分は翌期の利益が増加するので、最終的には同じになることや、通常の経理処理でも、今期の経費か翌期の経費かの解釈がわかれて厳密には区別できないこともあるので、税務調査でもそれほど厳しく扱われるわけではありませんが、日付の改ざんなど証憑の偽造工作が発覚すれば、重いペナルティが課されるのは当然です。

7.特別損失

 売掛金の焦げ付きによる回収不能や不渡手形を掴まされたことにするなど、通常の取引以外の損失を装う脱税方法です。これらの脱税は取引の相手先が必要になるので、脱税者が単独で実行できることはなく、表面上は辻褄が合うように指南する裏社会のブローカーが関与しています。

 しかし、通常の業務では全く関係のない取引先が唐突に現れる不自然さなど、調査官が違和感を感じれば、その後にたどる末路は上記1「領収書の工作」と同様になります。また、この末路には、脱税という弱みを裏社会の人間に握られることになり、その後の人生がどうなるか、というものも含まれているのでご注意を。

8.在庫を少なく見せかける(在庫調整)

 「在庫を少なく見せかける」という脱税方法があります。具体的には、

・期末の卸棚表を書き換える
・破棄して実際よりも少ない在庫量を帳簿に記載

のいずれかです。しかし、仕入と在庫の関係を丹念にチェックすれば、この方法による脱税はすぐに発覚してしまいます。

 そもそも、在庫を少なく見せかけると、なぜ脱税ができるのでしょうか。商品は仕入れただけでは費用にはならず、売上原価として売れた分だけが費用になります。売れた数の計算は、たとえば、

・前事業年度から繰り越された在庫 10個
・仕入 90個
・在庫 30個

ということだと、

・売れた数=10+90-30=70個

という計算過程で算出されるので、これが1個1万円であれば、売上原価は70万円になります。しかし、本当は在庫が30個であるところを20個であると偽って計算すると、

・売れた数=10+90-20=80個

となって売上原価は80万円になります。すると、10万円分の売上原価を過剰に計上することになり、その分、利益を少なく申告することになるのです。利益に税率を乗じて税額を算出する法人税では、こうして脱税が図られます。

 「在庫を少なく見せかける」という方法は、広義には「費用を多く申告する」ものの一つなのですが、この方法には他の脱税方法にはない「ある特殊性」があるため、3つめの脱税方法として区分する考えもあるようです。

 「売上を少なく申告する」や在庫調整以外の「費用を多く申告する」という脱税方法には、必ず取引が介在します。つまり、これらの方法は取引の相手が存在するので、「誰かに売ったものを除外する」「誰から何かを買ったことにしておく」ということになり、その相手を調査されると、脱税は直ぐに発覚してしまいます。

 また、これらの脱税は、取引先を含めて、直接間接に、誰かへ迷惑をかけることにもなります。これに対し、この在庫を少なく見せかける脱税は、自分の中だけで完結させることが可能なため、着手がしやすく、脱税者としては、安易に手を染めやすい方法なのです。

 ただし、この脱税方法は、その期の税金は安くなりますが、そのままにしておくと、翌期の税金は高くなってしまうという欠点があります。「本当は存在する在庫」が「帳簿上は存在しない在庫」になっているので、翌期は、帳簿上は存在しない在庫を売上げても、これに対する売上原価は計上できず、売上だけを計上することになるからです。具体的な事例をあげると、

・翌期へ繰り越す在庫 30個(正しい数)
・仕入 90個
・在庫 40個

ということであれば、売れた数は、

・売れた数=30+90-40=80個

という計算過程で算出されるので、これが1個1万円であれば、売上原価は80万円になります。しかし、本当は翌期へ繰り越す在庫が30個であるところを20個であると偽って計算していたとすると、帳簿上は、

・売れた数=20+90-40=70個

となって売上原価は70万円となり、本来の売上原価である80万円より10万円少なくなってしまいます。

 在庫を帳簿上少なくして売上原価を多く計上しても、翌期はその分の売上原価を少なく計上しなければならないので、結局は同じになる、ということです。これを回避するために、また在庫を少なく計上して・・・となると、永遠に在庫調整を繰り返すことになります。

 つまり、在庫を少なく見せかける脱税を続けていても、過去にしていた在庫調整による脱税を隠蔽する為には、最終的に帳簿上の在庫数と実際の在庫数を一致させなければならず、結局、納税額も正当な金額になる、ということです。当座の税金を少なくしたいがためだけの、その場しのぎの脱税である、というのはこのためです。しかし、その場しのぎの脱税だとしても、税務署に発覚すれば、当然、厳しいペナルティーが課せられるのはいうまでもありません。


4.税務調査を回避する


 脱税について、「売上を除外」「経費の水増し」という手口をご説明してきました。脱税が発覚するのは、脱税の手口が未熟だからなのでしょうか。もっと巧妙に?実行すれば、脱税は発覚しないものなのでしょうか。残念ながら、淡い期待は持たない方が良いでしょう。

 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」といいます。もし、あなたが税務署で長年に及ぶ税務調査の経験を積み重ね、相手の手の内を知り尽くしている元税務調査官であれば、現役の税務調査官との知恵比べの土俵に立ち、「より巧妙に」という方向性を模索してもよいのかもしれません。

 しかし、あなたは税務調査官の手の内がほとんど分かっていないのに、一方では、税務調査官は脱税者の手の内は知り尽くしています。あたなと税務調査官の実力の差は、小学生の草野球とプロ野球ほどの歴然たる開きがあるわけで、あなたが無い知恵をどれだけ絞って考えても、その道のプロに敵うわけがありません。

 せめて税理士の応援団でもいれば、少しは状況が好転するかもしれませんが、資格剥奪のリスクを冒してまで脱税指南をしてくれる変わり者の税理士を探し出すのは、宝くじに当たるよりも難しいでしょう。

 本気で?脱税を志向するのであれば、根本的なコペルニクス的発想の転換が必要です!

 脱税が発覚するのは税務調査があるからで、税務調査そのものがなければ、ある意味、脱税はやり放題になります。脱税をするために経理操作をあれこれ悩んで考えたとしても、あなたの実力では税務調査官に敵うわけがないのですから、税務調査官と知恵比べをする愚を犯すより、税務調査そのものを如何にすれば回避できるかを模索する方が、はるかに賢明だということです。

1.税務調査官を丸め込む

 「税務調査そのものがなければ」とくれば、真っ先に思い浮かぶのは、税務調査官に金子を積んで、調査をやめてもらうことでしょうか。しかし、税務調査官にいきなり金子を積んで「見逃してください」とお願いすることは、「私は脱税をしているので逮捕してください」と自白しているのと同じです。そこで暗躍するのが、税務署と強いパイプを持つブローカー、つまり、国税出身のOB税理士ということになります。

 当局でも職務規律を厳しくするなどして税務調査の不正に厳しく対応しており、以前よりは改善されているようですが、依然としてブローカーを介して納税者と接触をもつ税務調査官が後を絶ちません。札幌国税局のトップだった元国税局長大阪国税局OBの税理士グループが、それぞれ脱税に関与して逮捕されています。

2.わざと赤字

 日本全国における法人や個人事業者の数は莫大であり、数の限られた税務調査官でこれらを全て調査することは不可能です。そうなると、調査対象の絞り込みが必要になってきますが、そこでは「儲かっている」事業者が優先して調査対象になります。逆に云うと、赤字会社であれば調査対象からは外れやすい、ということでもあります。

 ある程度の規模以上の会社は、決算が黒字か赤字かにかかわらず、一定の間隔で必ず税務調査が実施されますが、小規模事業者であれば、決算が赤字だと、調査対象から外れる可能性は高まります。

 「税務署員を丸め込む」のと違って、誰かに脱税の弱みを握られることもなく、また、難しい経理操作をすることもなく、単純に赤字で申告してしまうだけなので、費用対効果は抜群ですが、税務調査が入れば、一巻の終わりです。

3.所在地をあいまいにする

 実際に事業を行っている場所と違う場所を納税地とする方法です。たとえば、実際の事業は東京で営んでいるが、登記上の本社は沖縄にする、ということです。法律上は納税地のある税務署が調査を担当しなければならないので、本社が沖縄であれば、東京での事業に対する税務調査も、沖縄の税務署が担当することになります。しかし、渡航費などの予算にも制限があるので、よほど脱税の確信が得られなければ簡単に東京まで税務調査に出向くわけにはいかない、という法律の急所を突いたものです。

 これとは別の方法として、「納税地を数年おきに転々とし、税務調査を困難にする」というものもあります。転入したての納税者については、資料も少なく、また、税務署間の引き継ぎも煩雑なので、転入後に直ぐ税務調査を実施することはあまりない、という盲点をついているのです。

4.代表者を特定させない

 税法には「実質課税の原則」という考えがあり、これは「名義上のみで判断するのではなく、実質的に所得を得ている者に対して課税する」という税法固有のものです。たとえば、マンションのオーナーが、名義上、幼児であったとしても、実質的に管理しているのが親であれば、親に対して課税する、という考え方です。これは、不当に所得を拡散させて税負担の軽減を図ろうとする租税回避行為の防止を意図したものなのですが、この考えの虚を衝いたのが「代表者を特定させない」という脱税方法です。

 全ての業種で実施可能なわけではないのですが、風俗産業などで散見されるようです。たとえば、店長を事業者にしているものの、この店長は単なる雇われであって実質的な経営者ではない、というものです。店長は簡単な指示を受けているだけで、実質的な経営者のことはほとんど知らされず、その所在さえ分からない、といった仕組みになっています。この風俗店がどれだけ脱税していても、実質的な経営者が分からなければ、「実質課税の原則」の考えにより、課税のしようがないわけです。

5.究極の脱税方法は?

 脱税をやり遂げるには、売上や経費を操作して税務調査官と知恵比べをする愚を冒すよりも、税務調査そのものを回避する方が賢明だということで、

・税務調査官を丸め込む
・わざと赤字
・所在地をあいまいにする
・代表者を特定させない

という方法をご紹介しました。しかし、税務調査そのものを回避する方法として、これらをはるかに凌ぐ、究極の脱税方法がまだあるのです。

 「脱税は殺人よりも難しい」と云われることがあります。その理由は、脱税とは、自らが開業届という容疑者宣言をしたうえで、確定申告書という主要な証拠を当局に提出して実行しなければならない、非常にハードルが高い犯罪だからです。これに対し、殺人は、容疑者宣言などをする必要は全くなく、証拠隠滅もやり放題です。そもそも、死体があがらなければ、殺人があった、という事実そのものが露見することもありません。

 これを逆に考えていくと、全く違った景色が見えてきます。

 税金を納付しなければならないのは、確定申告書を提出しているからで、この確定申告書を提出しなければならないのは、開業届を提出しているからです。そして、開業届を提出しているからこそ自らの存在を税務署に認知されてしまうわけで、諸悪の根源?である開業届を提出しなければ、全てを闇に葬れる、ということになります。

 究極の脱税方法は、そもそも全ての納税手続き自体を一切行わず「無申告」を通すことだと云われています。というのも、日本では、サラリーマンを除く納税者は、自らが税務署に税金を計算して申告する制度になっているので、本人が申告しなければ、これと連動している税金の納付も結果として免れてしまいます。当然、税務署は無申告者の摘発に注力していますが、誰がどこで事業を行っているのかということは、そう簡単に把握できるものではありません。

 法人だと設立にあたって登記をしなければならないので、これを端緒に容易に調査ができるのでは、と想像してしまいます。しかし、登記した法人のデータが自動的に税務署へ全て転送されて開業届提出の有無をチェックするようなしくみになっているわけではないので、法人設立に登記が必要だからといって、これに伴って開業届提出の有無を税務署が簡単に把握できるわけではないのです。

 ましてや、法人化せずに個人事業として営んでいれば、ハードルはさらにあがります。実店舗を持つビジネスなら、これを手がかりとして税務署としてもまだチェックのやりようがありますが、店舗を持たないネットビジネスやサービス提供型ビジネス等であれば、税務署がこれらの実態を把握するのはかなり厳しくなります。顧客は全てクチコミで料金も手渡し、一切の収入記録も残していない、とくれば、全くのお手上げ状態になります。

 また、仮に無申告者が発覚しても、それが納税の対象となるかは別問題です。収入があっても、事業に必要となる経費、そして、基礎控除や社会保険料控除等の所得控除を勘案すれば、収入はあっても課税所得はマイナスになる可能性があります。税務署は「徴税ビジネス」とも云われていて、彼らは如何に効率よく税収を増やすかというノルマに追われていますから、効率の悪そうな相手に対しては敢えて税務調査を実施しない傾向にあるようです。

 課税所得がマイナスであっても、法人や個人事業主なら確定申告は必要です。しかし、課税所得がマイナスであれば納付する税金がそもそもないので、このような無申告者を苦労して見つけ出しても、徴税することができなければ彼らのノルマ達成には全く貢献しないので、自然と足が向きにくくなる、というわけです。

 では、究極の脱税方法ともいえる「そもそも全ての納税手続き自体を一切行わず、全くの無申告を通す」という方法は、良いこと尽くめの万々歳なのか、というと、残念ながら、そうではありません。それ相応のリスクやデメリットも存在するので、それなりの覚悟が必要です。

 当たり前ですが、無申告による脱税が発覚すれば、本来の税金に加えて追徴課税を課せられます。また、自らに税務調査が直接入る可能性は低くても、売上や仕入などの取引相手が事業者であれば、その事業者の反面調査としてこちらが税務調査される可能性はあるので、これを端緒として、脱税が発覚することはあり得ます。そうなると、税金の時効は9年なので、最大9年分まで遡って、本来の税金に加えて罰金にあたる加算税と利息に該当する延滞税を支払わなければなりません。

 そして、運良く脱税が発覚しなかったとしても、次に、社会的な制裁がまっています。まずあげられるのは、クレジットカードやローンでの借り入れが出来ない点が挙げられます。無申告による脱税をしている期間は、公には無収入又は低額所得者として社会的には認知されることになるので、納税証明書は発行されず、安定した収入があることが前提となるクレジットカードやローンを組むことは不可能となります。

 また、社会的な信用力を証明できないので、ビジネスの世界では当たり前である、掛けによる商売も困難です。存在そのものがないことになっているので、当然、商工会などの事業者団体にも加入できません。

 プライベートなことであれば、独身だと、結婚するのも厳しくなるでしょう。税金を納めていない、つまり、まともな収入が無い、そんな男に娘の結婚を許す親はいません。そもそも親にたどり着く前に、まともな収入がないとなれば、女性から相手にされません。

 このように、無申告による脱税によって税金を払わないことは、その代償として、ビジネス的な信用が無いばかりか、社会において自分の存在価値が認められません。一生を裏社会で過ごす、という強い決意がある人を除いて、普通の人生を送りたいのであれば、無申告による脱税は、その代償があまりにも大きいといえるでしょう。

5.脱税の極意 3ヶ条


 脱税を完全犯罪としてやり遂げるつもりであれば、次の「脱税の極意 3か条」は必須になるので、肝に銘じておきましょう。しかし、この3ヶ条を厳守することは、ほぼ不可能に近いので、脱税を完全犯罪としてやり遂げることは極めて厳しい、という意味であることも、あわせて認識しておく必要があります。

その1 関係者をつくらない

 「脱税するなら独力でやれ」ということです。タレこみによって脱税が露見することは少なくありません。「正義感から憤りを感じて告発した」という事例もあるでしょうが、タレこみの殆どは「ねたみ、ひがみ、やっかみ」といった極めて人間的な感情に起因しているので、始末が悪いこと、このうえありません。そして、この問題を根本的に解決するには、脱税の事実を知る者を作らないこと以外にはありません。配偶者、親子、兄弟姉妹などの親族も例外ではないので、ご注意を。脱税するなら、誰にも相談せず一人でこっそりとすることです。決して人を信用してはいけません。

 ましてや、悪事を働こうとしているのに、代理を立てたり、立会人を設けたりすれば、ばれるお膳立てをしているようなものです。また、ケチ根性から支払った裏金を取り戻そうと、下請けに架空外注費を計上してこれをバックさせるなどは、ゆすり、たかりのネタを献上しているのと同じだという認識が必要です。

その2 証拠書類を残さない

 払った、払わないのトラブルを心配して領収書や請求書などの証憑を残すのは馬鹿の見本です。メモの類ですら残してはいけません。振り込み、小切手、手形などは云うに及ばず、預り金、仮払い、仮受け、貸付金、借入金などでの会計処理も厳禁です。また、お互いの貸し借り勘定を記録する人もいますが、愚の骨頂といえるでしょう。

 脱税をするからには、相手に騙されたら「それまで」と諦める覚悟が必要で、伝票や書類が必要となるような手口の脱税は最初からするな、ということです。世の中の脱税のほとんどが「頭隠して、尻隠さず」なのですが、大体、世の中は頭とお尻の両方は隠せないようになっています。

その3 脱税で得たお金は使わない

 脱税が成功したと思って油断していると、たいていの場合、脱税で得たお金を使ったことがきっかけとなって足が付いてしまいます。脱税で得たお金は決して使ってはいけません。使わずに地中に埋めておきましょう。地中に埋めるには紙幣では問題なので、やはり腐食の心配がない金(ゴールド)ということになります。

 となると、脱税で得たお金は一生使えないのでしょうか。そうであれば、脱税する意味がなくなりますが、完璧を期すなら一生使わないに越したことはないでしょう。しかし、それでは脱税の努力が報われないことになるので、せめて「ある時」がくるまでは、じっと待ち続けるしかありません。その「ある時」とは、いつなのでしょうか。察しの良い人はお分かりですね。そうです、ある時とは「時効」のことです。

 最低限、脱税の時効が成立する9年は、じっとひたすら待ち続けるのです。時効が成立してしまえば、たとえ脱税がばれたとしても、刑罰を受ける事も税金を追徴されることもありません。しかし、社会的制裁を受ける事は十分考えられるので、時効が成立したからといって、脱税で得たお金を正々堂々とは使わないことです。あまり目立たないように、隠れてこっそりと使うことです。

 しかし、脱税をする人は、一回だけや一年だけ、といったことはなく、通常は、毎回、毎年、脱税しているものです。.そうなると、その回やその年の脱税分は時効が成立していても、それより後の分は、まだ時効が成立していないので、脱税を続けている限り、脱税で得たお金は一生使えない、ということになります。当局は、派手な振る舞いをすると、これを端緒に税務調査を開始するので、脱税で逮捕されたくなければ、じっとおとなしくしていることです。

 

6.現物の隠し場所


 脱税記事では「当局と見解の違いはあったが・・・」というコメントがよく載りますが、この場合は、強制捜査、いわゆるガサ入れはないので、「所得隠し」の嫌疑による現金探しのための家宅捜索の憂き目に遭うことはありません。

 法人税法、所得税法などの違反容疑で告発された場合は、家宅捜査を受ける事になります。その目的は、脱税で得た現金や債券の現物を見つけることなのですが、それは「現物を見つける」ことが、所得隠しや脱税告発の絶対条件となっているからです。

 当局は「必ず隠している」という確証を持って臨みますが、実は、本当の真剣勝負はそこからになります。査察官は「絶対見つけてやる」という心意気を持っていますが、「もし見つからなかったら」という一抹の不安も同時に抱えています。

 現金の隠し場所としては「地中に埋める」という古典的手口の他に「玄関横の段ボールの山が全て現金の札束だった」というケースもあるようです。また金庫の鍵や隠し口座の印鑑などの小物は「消臭剤の容器の中」や「模型の機関車の中」など、とんでもない場所に隠されていることもあります。

 本人は一生懸命考えたつもりでしょうが、査察官からすれば、子供のかくれんぼと同じレベルの知能水準であり、隠したつもりになっている心持が漫画です。その他の隠し場所としては、

・壁掛けホワイトボードの裏
・床の間の下
・応接間の床下金庫
・プランターの土の中
・書斎本棚の中に並べられた書籍のケース
・仏間の書院棚の天井部分
・仏間床下の地中に埋めていたビニール袋の中
・押入れ内の衣装箱
・寝室の床下金庫
・自動車のトランク内
・屋根裏部屋にあった旅行用トランクケースの中
・玄関の靴箱内
・従業員・親族名義の貸し金庫
・敷地内の地中に埋めた瓶
・石垣の下

といったものがあります。そして、少しは考えたな、と思う隠し場所ですが、それでもレベルは大したことはありません。

・事務所内に作った隠し部屋の中
・クローゼット内に入り口を設けた地下室
・洗面鏡の裏側の壁をくりぬいたその内側
・押入れ内の一部を改造して隠しスペースを造り、その中に金庫を置く
・取引先名義で借りたセーフテイルーム
・従業員名義で借りたマンションの押入れ内の金庫
・知人名義で借りたトランクルーム

 さあ、あなたはどこへ隠しますか?

7.それでも脱税やりますか?


 脱税について、まず最初に、「売上を少なく申告する」「費用を多く申告する」といった経理操作による脱税について、ご案内しました。しかし、しょせんズブの素人に過ぎない人が、その道のプロである税務調査官と知恵比べをしても勝てるはずがありません。

 では、知恵比べに勝てないのなら、税務調査そのものを如何にすれば回避できるのかを模索した方が賢明ではないか、ということで、いくつかのケースをご説明しました。しかし、「所在地をあいまいにする」「代表者を特定させない」といったものに代表されますが、これらの方法を駆使すれば、脱税はうまくいくのかもしれません。しかし、これらの方法は、「そんなやり方をして、そもそも、まともな事業が営めるのか」という根本的な問題を内在しており、事業の成功より脱税の成功を優先させる、というワケの分からない状況に陥ります。

 最後に、「そもそも全ての納税手続き自体を一切行わず、無申告を通す」という、究極の脱税方法をご紹介しましたが、これにいたっては、最初から確信犯として「脱税を成功させることが最優先」という強い決意のもとに脱税を始めなければなりません。1年や2年ならまだしも、5年10年と経過していくと、発覚したときのペナルティも相当に大きくなってくるので、これを恐れて止めるに止めれなくなり、脱税をその後も継続せざるを得ない状況に追い込まれていきます。

 この「無申告を貫き通す」という脱税方法は、自分の社会的存在を否定される、という大きなリスクと背中合わせでもあり、一生を日陰の世界で生きていく相当な覚悟が必要になります。

 脱税が恐ろしいのは、実行した直後には何も変化がない、というところにあります。万引きでも、傷害でも、殺人でも、犯行直後に逮捕されることがあり、また、犯行直後が一番危険な時間帯なので、そこを越えると一安心です。一方、脱税については、確定申告書を提出した直後にその場で「脱税容疑で逮捕する」といわれることは、絶対にありません。3ヶ月経っても、6ヶ月経っても、おそらく税務調査が入ることはないでしょう。3年経ち、5年経ちして、忘れた頃にやってくる、というケースがほとんどです。

 最初の頃は細心の注意を払って慎重にしていても、特段に税務署から指摘を受けることもなく時が過ぎていくと、段々と脇が甘くなって、全てが雑になっていきます。そうでなくても、脱税という非常に高度な犯罪をやり遂げるのは、極めてハードルが高いのに、その頃になると神経も麻痺してきて、脱税が当たり前になっています。そして、ほとんど無防備の状態になったとき、「税務署ですが・・・」と怖いおじさんたちがやってきて、一巻の終わりとなるのです。

 いつ来るか分からないその時まで、あなたはずっと神経を張り詰め続けることができるでしょうか。


 

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2.相談対象者は?

 「小規模零細ながらも、本業で利益が発生し、税金対策が必要な方」を対象者として、税金だけでなく社会保険料も含めた租税公課の包括的な負担軽減を図ることに私どもは特化しています。詳しくは「顧問先を絞り込む理由は」をご参照ください。

 ちなみに、私どもがお手伝いをしている顧問先の一部をご紹介すると、

・日本を代表する1部上場企業の重電メーカーに原発関係の設計図を納品
・退職した会社とのパイプを活用して防衛庁などに技術サービスを提供
・サラリーマン時代に培ったノウハウを活かして厳選したレアもの雑貨を通信販売
・特殊資格をベースとして特定の分野に特化した介護サービスを提供
・全国紙新聞社の印刷部門に専門メンテナンスサービスを実施
・非英語圏の外国法人の日本駐在員として貿易事務手続きを担当
・ソフト自社開発とともに、技術顧問としてソフト会社をサポート
・退職した大手1部上場企業である商社に独自の業務サポートを展開

といった方々になります。これらの事業に概ね共通していることは、

・これまで培ってきた経験とノウハウをベースにしており、オリジナリティが強い
・事務所や店舗が不要で、自宅を本社として登記
・設備投資が不要
・社員は夫婦などの親族のみで、必要に応じてパートやバイトで補充

といった点が挙げられます。つまり、「強い独自性により差別化が容易なので価格競争に陥らず、かつ、実質的な費用が発生しにくい費用構造であるため、利益を稼ぎやすいビジネスモデル」だということです。

 あなたの事業が上記に共通する点が多ければ、税理士や社労士として、私どもはおおいにお役にたてると考えます。

3.顧問報酬は?

 事前のお尋ねで多いものの一つに「顧問報酬はどれくらいになりますか?」という料金に関するものがあります。顧問契約を締結するにあたって重要な項目ではありますが、家電製品の販売ではないので「XX万円です」といった即答できる性格のものではないと考えています。

 私どもでは「顧問報酬は業界相場を基本」としていますが、このあたりの詳細について「税理士報酬の業界相場は」に私どもの考え方も含めて詳述していますので、ご参照ください。

4.打合場所

  通常は、私どもがそちらに伺ってお話を承ります。これは、適切にアドバイスするには、話の流れに応じて、様々な書類を拝見する必要があるかもしれない、ということと、住居も含めた相談者の環境を把握したうえでアドバイスしたい、というのが主な理由です。

 しかし、もしご希望であれば、私どもの事務所へお越し頂いても、そちらの近くの喫茶店などでの打合せでも結構です。

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